本州で一番北に位置する青森県。「どんなところ?」と聞かれたら、りんごの生産量が全国1位で海産物も豊富で、ねぶた(ねぷた)の夏祭りが有名。なんて、間違ってはいないけれど、その奥深さまで語れる自信はなかったりする。青森県の面積は全国で8位と意外と大きい。だから地域ごとに特色があり、その土地のおもしろさがある。そんな魅力あふれる青森県のなかで、県南西部に広がる津軽地方の五所川原市をめぐる旅を紹介したい。

■ノスタルジックな気分が味わえる津軽鉄道「ストーブ列車」

津軽鉄道の起点である津軽五所川原駅。駅舎の姿からして風情がある

 青森県を大きく分けると西側が津軽地方、南側は南部地方。五所川原市があるのは津軽中南部だ。このエリアには日本最北の民間鉄道である「津軽鉄道」が通り、津軽五所川原駅~津軽中里駅を結んでいる。地域住民の足でもあるこの鉄道は、12月1日から3月31日までの冬季限定でダルマストーブを設置した「ストーブ列車」を運行している。

 「ストーブ列車」の運行は、1日3往復ほど(12月は変動)。乗車の場合は、通常の乗車券にストーブ列車券500円が別途必要となる。それでは、冬の最強コンテンツともいえるこの列車に乗って、雪国の風情を味わっていこう。

列車を待つ間、懐かしさが漂う駅舎の待合室でしばし休憩
冬の風物詩である「ストーブ列車」

 

■あぶったスルメを地酒とともに!

70年前に製造されたという、歴史を感じる車両の雰囲気がたまらない

 「ストーブ列車」は、しばれる津軽の冬をダルマストーブでぬぐだまる(暖まる)ために誕生した。昭和5(1930)年から運転し、昔は地元民が暖をとりながらおにぎりを温めるなど日常利用していたという。それが現在はアテンダントが同乗する観光列車として運行されている。

 女性アテンダントはスルメや地酒を販売するほか、観光ガイドもしてくれ、ストーブの上でスルメをあぶり、慣れた手つきで裂いて食べやすいサイズにしてくれるなど至れり尽くせりだ。熱々のスルメをかじりながら地酒をいただき、車窓から雪景色を眺める旅はとっても風情がある。

 ちなみに、「ストーブ列車」の車両は昭和29(1954)年に製造されたもの。車両上部のライトも当時のもので、かつては窓の近くには扇風機が設置されており、その名残としてスイッチが残っている。イスの手すりが木製で、手荷物を置く棚が「網棚」というのも珍しく、車両自体も見どころが満載なのだ。

石炭を燃料とする昔懐かしのダルマストーブ。これでスルメをあぶって熱々のまま食べられる

■途中駅にも気になるスポットが点在

ストーブ列車は太宰治の代表作にちなんで「走れメロス号」と名づけられている

 津軽鉄道の「ストーブ列車」は、津軽五所川原駅~津軽中里駅間20.7kmを約41分で結ぶ。アテンダントによると、「津軽五所川原駅から津軽中里駅までの間で天候が変わる」そうで、車窓から空模様の変化も楽しめるのだとか。

 乗車した日は大粒の雪の降る、雪国らしい景観だった。日によってはこの地域ならではの地吹雪を眺めたり、岩木山の姿を見たりできるという。ほかにも、鉄道スタッフが手作りしたという地吹雪対策の「防雪柵」などが視界に入り、車窓からの眺めは飽きることがない。

 今回は終点の津軽中里駅まで行って、また津軽五所川原駅まで戻ってきたが、途中駅で下車して観光を楽しむというものおすすめだ。例えば、金木駅には、作家太宰治の生家であり現在は記念館になっている「斜陽館」に立ち寄れる。芦野公園駅は旧駅舎が喫茶店になっており、赤い屋根の情緒あふれる店舗でゆっくりくつろげる。列車の時刻を考えながら、途中下車して戻ってくるプランもありだろう。

木材などを使って鉄道スタッフが自作したという「防雪柵」。車窓から見ることができる