冬も終わりに近づき、少しずつ春めいてきた今日この頃。季節の植物を愛でたくなる方も、多いのではないだろうか。今回は、一足先に春の訪れを感じられる神戸の梅の名所「岡本梅林公園」を紹介したい。

 岡本梅林公園には、41種類、約200本の梅が植えられている。見頃は2月下旬から3月上旬だが、遅咲きの品種もあり4月頃まで楽しめるのが特徴だ。

 さらに、梅林公園から徒歩30分程度のところに、保久良梅林(ほくらばいりん)もある。保久良神社の裏手にあり、約250本の梅の見頃は3月中旬頃からだ。

 簡単な登山ができる程度の体力があれば、2か所を回れるため、ぜひ挑戦してほしい。さらに、お花見のあとはスイーツ激戦区でもある岡本で、グルメを堪能するのもおすすめだ。

■梅の名所である岡本梅林の歴史をひもとく

 岡本は、神戸市東灘区に位置する地域で、神戸の中でも高級住宅地として有名である。かつて岡本は、「梅は岡本、桜は吉野、みかん紀の国、栗丹波」と言われるほど、梅の名所として知られ、2万本の梅が咲きほこっていた。1798年頃、江戸時代の摂津国の名所を絵画と文章で紹介した地誌「摂津名所図会」に岡本梅林の図が掲載されていたというから、驚きだ。

 しかしその後、水害や神戸大空襲、鉄道や住宅地の開発などにより、次第に岡本梅林が縮小していく。昭和57年、当時の神戸市長や地元住民の有志らが、名所としての梅林を再興しようと整備を始めたことで、今でも多くの人が梅の花や香りを楽しむことができている。

■41種類、約200本の梅が見られる「岡本梅林公園」

 岡本梅林公園までは、阪急岡本駅から徒歩10分程度で到着するが、道が入りくんでおり迷いやすいため「岡本梅まつり」のピンクの幟を目印にして進むとよいだろう。神戸らしい、山に向かって続く緩い坂道を上り、案内の看板に従って左へ曲がる。

「岡本梅まつり」のピンクの幟を目印にすすむと岡本梅林公園まで迷わない

 岡本梅林公園に到着すると、梅の香りが入り口まで漂い、早くも春らしい気分に浸れる。

岡本公園に到着。梅の香りが早くも春を感じさせる

 公園内はスロープや手すりが設置されており、ベビーカーや車椅子の方でも気持ちよく梅見が楽しめる。広々とした道幅など、バリアフリー設計がうれしいポイントだ。

だれでも梅見が楽しめるよう、手すりやスロープが整備されている

 紅梅や白梅、枝垂れ梅などのさまざまな品種の梅が、目を楽しませてくれる。公園内には、福岡の太宰府天満宮から寄贈された「飛梅(とびうめ)」や、しっとりしたピンク色が特徴の「楊貴妃」という品種もあるので、探してみよう。

スロープを上がった先には、さまざまな梅の花が

 ゆっくり歩いていくと、紅と白のハイブリッドの梅を発見。白い花の中に紅色がよく映える。

紅と白がミックスされた「思いのまま」という品種の梅

 また、公園内にあるテラスからは、梅と神戸の街が見渡せる。岡本梅林公園に来たら、ぜひ訪れてほしいポイントだ。山と海が近いという、神戸特有の地形も観察できる。

神戸の街並みと梅の共演。街の向こうには海が見える

 岡本梅林公園には約200本の梅が植えられており、なかなか見応えがある。さらに、斜面を活かした公園であるため、坂道の上から見る梅や、下から見上げる梅など趣のある楽しみ方ができおすすめだ。

 なお、岡本梅林公園には専用の駐車場はないため、近隣のコインパーキングに停める必要がある。また、公園のすぐ近くにある岡本八幡神社にも梅が植えられており、散歩がてら寄り道するのもいいだろう。