私の住む長野県北部の街からは晴れた日には真っ白な北アルプスの山々が見える。雄大にそびえる姿を見る度に惚れ惚れし、登りたい気持ちになる。他にも北信五岳や四阿山などに囲まれており、普段から周囲の山々をチェックしてしまう癖がついているのだ。さて、今年も冬の北アルプスに登ろうと唐松岳を選んだ。唐松岳は“ホームマウンテン”と言えるほど通っている山の一つである。前回の記事でも書いたが、山選びのポイントは晴れる見込みがあるということと、撮りたい景色で選ぶ。今回は真っ白になった北アルプスの山々の撮影に挑んだ。

■本格的な雪山へ行く時にはリスクヘッジも欠かせない

遮るものがない八方尾根を歩く

 本格的な雪山へ行く時ほど、数日前からの積雪情報や自分の体力・技術と最悪の場合の対処を考えて行き先を決めている。

 唐松岳は北アルプスの雪山入門とされるが、私が雪山初心者の頃のこと、“憧れる冬の唐松岳”が晴れる予報ではあったが、稜線上では風速30m前後だった日があった。仲間は「行ってみて判断しよう」と言ったが、私にはその強風の中を歩く自信がなかったため、行き先を変更した。同日、晴天から急変してホワイトアウトになり、強風による遭難事故が発生したとニュースで知った。この出来事は、雪山選びを慎重にすることの大切さを学ぶことになった。

 唐松岳は、八方尾根からの景色が素晴らしいが、突然の吹雪や強風で行動不能となったときに逃げ場がない怖さがある。実は、私もホワイトアウトを経験したことがある。それだけではなく雪が降りたての時に胸から下が埋まるほどラッセル地獄を味わったこともある。リスクを考慮して正しく判断していただけたらと思う。

■ここにも暖冬の影響を感じる

尾根がいつもより細く感じた場所

 八方尾根スキー場のゴンドラ「アダム」とリフト2本を乗り継ぎ八方池山荘まで進む。リフトに乗りながらすでに白馬三山と五竜岳の姿を楽しめる。暖冬小雪で尾根上も雪は少なく、八方池の案内看板もそのまま出ていた。雪も程よく踏み固められているので、今日のコンディションであれば、初心者でも歩きやすい。しかし、リフトの最終時間が15時10分までとなっており、時間制限があることも忘れてはいけない。

 またケルンごとに風の強さが増していき、寒さはしっかりと“厳冬期“であった。いくつか急斜面が出てくるのだが、これがなかなか息切れのする場面である。丸山ケルンでハードシェルを着てピッケルを手に握った。山頂付近は雪も多少増えるが、尾根はいつもより細い印象であったし、頂上山荘に出る手前はトラバースになっていた。アイゼンが雪に隠れた小岩に引っかかりやすく転倒にも注意した。