<後編に続く>

  今回紹介するのは長野修平さん。ネイチャークラフト作家や野外料理人など、いくつかの肩書きがあるが、つまりは野外活動の達人だ。

  自ら切り開いて整備したという自宅の裏山にある広場で、焚き火で料理をしてティピに泊まる、そんな1日に密着して取材させてもらった。

■サラリーマンからネイチャークラフト作家へ

SAVOTTAのザックに道具一式を入れ、括り付けて自宅裏のフィールドへ

 北海道の苫小牧で生まれ育った長野さんは、家業が山菜料理のお店を営んでいた。毎年春になると家族で森に入り、山のような量の山菜を採っていた。

 「アウトドアの師匠と呼べるような人はいないけど、敢えていうと母親かな」

 いつもたくさんの山菜を抱えて森の中を歩いていた母親の姿が忘れられないそうだ。だからこそ、山菜やその調理法についての知識はプロ並みだし、樹木についての知識もとても深い。

この日の道具一式。どれも思い出と思い入れ、由来のあるものばかりだ

 大学を卒業した後に紆余曲折を経て東京のPR会社で働いた。今の姿からは想像もつかないのだが、スーツを着たサラリーマン時代は湾岸のタワーマンションに住みながら、海岸で拾った素材などで商品宣伝用の飾りを作ったりしていた。それが人づてに伝わり、いつしかいろいろな仕事が舞い込むようになったそうだ。

自作したり国内外の友人や知人にもらったりした手作りのカトラリー。どれも美しい

  今ではネイチャークラフト作家として、自然にあるものと創意工夫をかけ合わせたクラフトワークの講座を各地で催している 。できるだけ素材そのものの姿形を活かし、その趣きと面白さを活かす作風は、ブッシュクラフトにも通じる。併せてモーラナイフやフェールラーベンなど、国内外のブランドのアンバサダーも務めている。