■ハイキング気分で室堂山まで

 イタリア人の相棒と初めての日本アルプス・立山黒部アルペンルートに足を踏み入れ、イタリアのアルプスとは異なる緑のグラデーションの稜線に魅了された我々は、さらなる絶景を求めて標高2,675mにある室堂山の展望台を目指した。

 室堂平のハイキングコースの分岐点から室堂山へ、標識に従って登り始める。足場はとても整備されていて歩きやすく、イタリア・アルプスのワイルドな獣道を歩き慣れた我々には同じ「アルプス」とは思えないほど快適な道のりだ。

 昨日までの雨が嘘のような快晴、吹く風は肌に心地良く、思わず鼻歌を歌い出している自分に気づく。少しづつ高度が上がるたび、立ち止まって振り返り周囲を見渡す。同じ場所でも角度を変えるだけで全く別の風景が楽しめ、緑に映える真っ白な万年雪の景色が徐々に範囲を広げていく様は見飽きることがない。

 コースの入り口の看板には「立山カルデラ」の解説があったが、この先には「もう一つの立山」と呼ばれる「立山カルデラ」の断崖絶壁の荒々しい風景が見られるらしい。火山の合間の渓谷が激しい侵食作用によって拡大したといわれる巨大な窪地は、東西約6.5km、南北約4.5km、標高差は500~1,700mもあるという。行き先に待っている絶景に心を躍らせながら、自然と足取りも軽くなっていく。

室堂平から室堂山の展望台へと続く登山道に入る
「この先登山道」の標識。ここから先は登山用の装備が必須
高度が上がるごとに風景も目まぐるしく変わっていく
万年雪が周囲の景色の中に広がり始めた
石が積まれ、歩きやすく整備された登山道