山に泊まると、普段とは違った特別な体験が得られる。夜空に広がる無数の星や、息をのむような神々しいご来光など、山の中でしか味わえない美しさに感動するだろう。

 宿泊をともなう山行の場合、山小屋泊はテント泊に比べて準備や手間、荷物が少なく挑戦しやすい。しかし、初めてとなれば、持ち物やルールなど、事前に知っておきたいことがいくつかある。

■初めての山小屋泊で気になる「5つの疑問」

 一言で山小屋といっても、設備が充実している山小屋もあれば、寝るスペースだけが提供される山小屋もある。そのため、どの山小屋に泊まるかによって準備すべき持ち物や心構えも異なってくる。

 また、山小屋ならではのルールやマナーもあるため、初めての方は戸惑うこともあるかもしれない。そこで、山小屋泊が初めての方が特に気になるであろう5つの疑問点を解説する。

●疑問1:山小屋泊で必要なものは?

 筆者が日帰りの装備と比べて、山小屋泊で追加しているものは衣類や寝具、洗面用具や火器類だ。衣類は汗をかくので、着替えを持っていっている。また、山の上は麓よりも冷えるので、防寒着は必須だ。なお、これらは山小屋の環境によって持ち物が変わるため、事前に情報収集しておくことが大切だ。また、宿泊前には山小屋の予約も忘れずに。

筆者の山小屋泊装備の例

●疑問2:寝具はどこまで用意する?

尾瀬(おぜ)小屋の寝室

 布団が常備されている山小屋であれば寝具は必要ない。しかし、近年はコロナ禍の影響でシーツの持参をお願いしている山小屋もあるので、ホームページや電話で確認しておこう。

 もし布団の常備がない山小屋であれば、寝袋が必要になる。また、寝袋と併せてマットもあると便利だ。床の硬さによる背中への負担や床から伝わる冷気を軽減できる。

 山小屋泊の豆知識として、耳栓があると便利だ。山小屋では個室が少なく、大部屋で雑魚寝が多い。筆者は山小屋泊で他人の雑音が気になり、なかなか寝つけなかった経験がある。他人の寝返りの音やトイレに立つときの足音が気になってしまうのだ。しかし耳栓を使うと、これらの音を軽減できて静かに眠れる。

●疑問3:山小屋での食事

尾瀬小屋のテラスでボロネーゼを食す

 もし山小屋に売店や食事の提供があれば、利用するのもよいだろう。山の上なので価格は高くなるが、荷物が少なくて済む。

 一方、山小屋に売店や食事の提供がなかったり、安く済ませたい場合は食料を持ち運ぶ必要がある。筆者はフリーズドライ食品やバーナーを持参している。フリーズドライ食品はコンパクトで持ち運びしやすく、お湯をかけるだけで温かい食事が食べられるので便利だ。自炊スペースを備えた山小屋を選べば利用もできるので、予約時に確認しよう。

●疑問4:お風呂がないけどどうしている?

 ほとんどの山小屋にはお風呂がない。登山で汗をかいたままだと、体がベタベタしてしまうので対処法が気になる人も多いだろう。筆者はボディーシートを持参して体を拭いている。頭や髪の毛は、ドライシャンプーを利用するとよいだろう。

 なお、環境保護のため、日常で使うようなシャンプーや歯磨き粉は使用しないように。歯磨きは、自然由来の歯磨き粉やマウスウォッシュを使用するのがおすすめだ。

●疑問5:山小屋に着いてからはどう過ごす?

 山小屋のチェックインは15~16時まで、就寝は20~21時のところが多い。就寝までの時間は、食事やお酒を楽しんだり、昼寝をしたり、登山者同士の交流を深めたりと、人によってさまざまだ。筆者はテラス席に座り、景色を眺めながらゆっくりくつろぐのが好きだ。

 また、早めに就寝し、深夜に起きて夜空鑑賞をするのもよいだろう。山の上は光源がほとんどないので、地上よりも星空が美しく輝く。朝にご来光を眺めるのもおすすめだ。