富山県、長野県、新潟県、岐阜県にまたがる飛弾山脈は通称「北アルプス」と呼ばれ、3,000m級の山々が連なり、日本でも有数の山岳地帯だ。

 北アルプスでは、最高峰の奥穂高岳(おくほたかだけ・標高3,190m)を筆頭に、槍ヶ岳(やりがたけ)、剱岳(つるぎだけ)、白馬岳(しろうまだけ)など名だたる山々が連なっている。

 今回紹介する、蝶ヶ岳(ちょうがたけ・標高2,677m)は北アルプスの中では少し「地味」な存在かもしれない。だが山頂から望む眺望はすばらしく、穂高連峰や槍ヶ岳を望むには最高の山だ。眺望抜群の蝶ヶ岳を1泊2日で登るルートを紹介したい。

筆者の歩いたルート(国土地理院地図より引用)

■三股登山口から「ゴジラみたいな木」を経由して蝶ヶ岳へ

三股登山口。最後のトイレがあるので必ず行っておこう

 起点となるのが三股(みつまた)登山口だ。三股登山口から蝶ヶ岳山頂までは、登りが4時間30分~5時間、下りが約3時間30分となっている。健脚者なら日帰りも不可能ではないコースだが、1泊することで山の上での時間をたっぷりと満喫できる。

 三股登山口は駐車場から林道を15分ほど歩いたところにある。蝶ヶ岳への登山道と、お隣りの常念岳(じょうねんだけ)へと続く登山道が延びており、2023年の8月末に筆者が訪れた時も多くの登山者で賑わっていた。

 登り始めはしばらく緩やかな道が続くが、吊り橋を渡ったところから勾配は急になってくる。登山口から40分ほど登ったところで、今回のルート名物「ゴジラみたいな木」が出現する。

三股登山口から蝶ヶ岳へと向かう途中にある「ゴジラみたいな木」

 木の形がまるでゴジラを思わせるような形状になっており、口に当たるところに歯に見立てられた石がたくさん置いてあるので「ゴジラみたいな木」と呼ばれるのもうなづける。

 ゴジラみたいな木にはベンチが設置されているので、休憩するのにもぴったりだ。ここから長い登りが続くので、呼吸を整えてから先へと進もう。

標高を上げるとともに勾配も急になってくるが、登山道はしっかりと整備されている

 ゴジラみたいな木から1時間10分ほど登ると、標高約1,900m地点の「まめうち平」に到着する。まだまだ先は長いので、ここでもしっかりと休憩をとり、エネルギー補給をしてから山頂を目指したい。

 まめうち平から蝶ヶ岳ヒュッテまでは約2時間30分。長い登りとなり、途中ゴロゴロとした岩が多い区間があるが、危険を感じるような箇所はなく、道迷いするような箇所もなかった。山頂付近まで樹林帯が続き、標高2,000mを超えたあたりから樹林帯の向こうに常念岳が見え、雄々しい山容を確認できる。第一から第三ベンチを経て、ようやく辺りの木々がハイマツ帯になってくると山頂は近い。

ようやく小屋が見えてきたと思ったら、槍ヶ岳の尖った山頂も見えてきた

 ハイマツの中の登山道を登っていくと山小屋が見えてくるが、同時に槍ヶ岳の尖った山頂も顔を出してくる。ここまでの長い登りに筆者も疲労したが、槍ヶ岳の姿を確認できたことに山頂からの眺望が楽しみになり、疲れも忘れて山頂へと急いだ。