ときに強く、ときに穏やかに梅雨らしい雨が降り続いています。渇水気味だった渓は、すっかり瑞々しさを取り戻していているようです。銀の雫の向こうに煙る山々、水気を含み重たそうに首を垂れる木々は、むしろ生命感に溢れており、晴れた日よりずっと生き生きとしているように感じます。

 雨の影響で渓流魚たちの活性が高くなっていることに期待して、岐阜県の北部、飛騨地方の渓流へフライフィッシングに出かけてきました。

■川を巡る旅、釣り旅の魅力

そぼ降る雨に煙る山々。しっとりとした日本らしい情緒を感じます

 年に何度か足を運ぶ川があります。同じ川へ足繁く通うのは、まるで旧知の友人を訪ねるようで親しみがあります。一方で新たな流れを探して彷徨っていると、どこか恋愛にも似たトキメキを感じずにはいられません。胸が躍るような流れを探すのは、釣り旅の醍醐味のひとつですね、

 岐阜県飛騨地方は言わずと知れた山国であり、山々の合間を縦横無尽に、まるで毛細血管のように数多の清流が流れています。川沿いの道を下流から上流へ。峠を越えて里へと向かって。気になる場所で川辺に立ち、環境を確認しながら流れに潜む魚たちの姿を思い描くのは、竿を振るのと同じくらい楽しいひとときです。時間さえ許すなら、あえて釣りをせずにそんな一日を過ごすのは、釣り旅に欠かせない時間です。渓流釣り、渓に身を置く喜びを知っているアングラーなら、きっと共感してくれる人も多いでしょう。安全管理の観点からも周辺状況をしっかりと把握することは大切ですね。

■久々の青空、再会、ペアルック!?

「美女街道」の看板に心引かれました(移動途中に通っただけで、ここで釣りをした訳ではありません)

 翌日、東の空から差し込む光が眩しく目を細めます。山の稜線まで明瞭に見えていますが、谷間には湿気が残り、肌寒い朝でした。普段より一枚余分に薄手のパーカーを着込みました。

 さて、本日の釣りには同行者がいます。しかも珍しく女性です。お互いに山をフィールドに仕事をしているのですが、一緒に釣りに行くのは初めてで、久々の再会です。待ち合わせの場所に着いた途端、挨拶もそこそこに苦笑いされています。なんと、パーカーが一緒で、まるでペアルックでした……。

 実は彼女は近くの街で育った生粋のローカル(ルアー)アングラーです。しかし、聞けばこの日予定していた川では釣りをしたことがないそう。僕は何度か来ているうえ、前日にちょうど川見をしていました。やや水嵩を増していた流れも落ち着いており、魚たちの活性は高そうです。アウェイでローカルをアテンドするような、少々変わった展開となりました。