気温がグッと下がる日も増え、いよいよ冬山の季節到来を感じられるようになってきた。山々が雪に覆われるのも時間の問題だろう。

 山梨県の北杜市にそびえる日向山(ひなたやま)は南アルプスに属し、甲斐駒ヶ岳の前衛峰を担っている山だ。標高は1,660mで、そこまで高くないことから例年12月でもあまり雪を心配せずに気軽に登ることができる(1月〜2月は積雪期となる)。

 山頂付近の雁ヶ原(がんがはら)からは八ヶ岳の景色を観るのによく、海辺を想像させる独特の山容から「天空のビーチ」とも呼ばれる。難所も少なく、短い所要時間で登れるため、日没時間が早くなった冬場でも初心者におすすめだ。

■矢立石登山口からのハイキングコース

矢立石登山口。付近の登山道の情報や、熊出没の注意喚起の看板などがある

 スタート地点となるのは「矢立石(やたていし)登山口」。ここまでは舗装された道で車を運転しやすいが、道幅が狭い箇所があり気をつける必要がある。

 登山口付近の林道の片側に駐車スペースがあるが多くは停められず、筆者が訪れた時も午前9時には満車状態だった。登山口まで車で行く場合には早めの到着を心がけたい。

矢立石登山口の駐車スペース。スペースは広くないので、駐車する際は注意が必要

 もし矢立石登山口が満車だった場合、手前にある尾白川渓谷駐車場に停めよう。登山口まで歩いて往復2時間ほどかかるが、スペースは広くトイレもある。時間に余裕があるのであれば、はじめから尾白川渓谷駐車場を利用し、時間をかけて日向山を目指すのもいいだろう。

尾白川渓谷駐車場のトイレ。甲斐駒ヶ岳への登山口にもなっているので平日も賑わう

 矢立石登山口から登り始めると、広葉樹の樹林帯が続く。緩やかに登るのでテンポよく歩けるだろう。山頂手前までは一気に上るが、急登は少なく全体を通して「山歩き」を楽しめるコースだ。

日向山に向かう登山道。静かな山歩きを楽しめる

 登山口から約1時間15分で日向山の三角点に到着する。三角点がある場所は眺望はなく、静かな樹林帯の中だ。

シラビソの樹林帯の中、笹に覆われたところにひっそりとある三角点と標識

■天空のビーチと八ヶ岳の絶景を満喫

 三角点からお目当ての「天空のビーチ」雁ヶ原までは5分もかからずに到着できる。 

日向山の山頂付近から望む八ヶ岳

 雁ヶ原の海辺を思わせる砂地の正体は、花崗岩(かこうがん)が雨風の侵食によりできたもの。高度感のある場所もあるが、砂はザラザラとしていて滑りにくい。

花崗岩のニョキニョキとした岩塔も見ていて飽きない光景

 下山は登ってきた道を下りる。日向山からは周回できる登山道もあったが、危険箇所があり事故もあったため、現在では通行止めとなっている。

 短い時間で山頂まで行け、ピーク付近の景色はまるで海辺から眺めているような感覚になる、ほかにはない山だ。例年積雪期は1〜2月だが思わぬ降雪もあるため、チェーンスパイクの携帯は忘れずに出かけてほしい。

 

【登山ルート・所要時間】
矢立石登山口(1時間15分)→日向山三角点(5分)→雁ヶ原・日向山山頂

●【MAP】矢立石登山口駐車場

●【MAP】尾白川渓谷駐車場