9月1日「防災の日」を前に、あらためて見直したいのが備蓄食だ。ひとたび大規模災害が起こると、物資の供給が滞り、電気・ガス・水道などのライフラインが使えなくなる可能性がある。家族全員が少なくとも3日間は自力で生活できるよう、備えを見直したいものだ。

 かつての備蓄のあり方は「常温保存できる食品をまとめ買いし、賞味期限が来るまで放置しておく」というパターンが一般的だった。しかし現代は、より洗練された「ローリングストック」という方法が推奨されている。いつも食べている食品を多めに買いだめしておき、日常で消費しながら、減った分は補充しておくというやり方だ。そのなかに缶詰やレトルトパウチ、フリーズドライなどの保存食を組み入れるのが理想的であります。

 中でも、昔から缶詰は非常食として重宝されてきたが、最近はとくに防災備蓄用として開発されたものが増えてきた。被災時のヒントと合わせて紹介したい。

■そのまま食べられるパエリアの缶詰

黒潮町缶詰製作所「鰹と海鮮たっぷりの土佐流・玄米パエリア」

 高知県にある黒潮町缶詰製作所の商品は、すべて防災備蓄食として開発されている。アレルギーを持つ人にも対応するため、全商品が8大アレルゲン(エビ、カニ、クルミ、小麦、ソバ、卵、乳、落花生)不使用。温められない状況下で常温で食べてもおいしく感じられるように、さまざまな工夫を凝らして製造されている。

 今年6月に発売された「鰹と海鮮たっぷりの土佐流・玄米パエリア」は、カツオにイカ、ホタテ、パプリカの具が入った玄米のパエリア缶だ。イカと香味野菜を炒めて旨味を引き出したソースが本格的な味で、黒潮町産の玄米もふわりと炊き上がっている。温めて食べればさらにおいしいが、そのままでもごはんが固くなく、イメージとしては“冷めたパエリア”のような感じ。カツオをメインの具に使っているのが、いかにも高知らしくていい。

 じつはごはんを缶詰にするのはかなり難しい。というのも、炊いて柔らかくなった米(アルファ化という)は、時間が経つと再結晶化し、生米のように固い状態(ベータ化という)に戻る性質があるのだ。なので、たとえ水分を多くして柔らかく炊いても、時間が経つとごはん粒同士がくっつき、箸が通りにくいほど固まってしまう。

 このパエリア缶は、ごはん粒同士がくっついていないし、ひと粒ひと粒が軽い歯応えのあるアルデンテ状態で仕上がっている。そのために黒潮町缶詰製作所では、特許を申請してもいいような新しい技術を開発したのだ。企業秘密なので明かせないけど、これまでのごはん缶詰とは一線を画した画期的な商品なのであります。