浅間山(あさまやま)は、群馬県と長野県の境にそびえる火山だ。「浅間山」とは複数の山の総称で、最高地点は標高2,568mの釜山(かまやま)だが、火口に近く踏み入ることは禁止されている。登れる山として最も高いのが、標高2,524mの前掛山(まえかけやま)だ。

 浅間山は日本百名山にも名を連ねているが、2024年7月時点で噴火警戒レベル2に指定されており、前掛山への登山は禁止されている。登ることのできない浅間山だが、その雄大な山容は「見て」楽しむだけでも十分に魅力的だ。

 今回は浅間山の西側に連なる外輪山をいくつか繋ぐルートを紹介したい。トーミの頭(あたま)から外輪山を縦走し、トーミの頭まで戻って来る周回コースだ。浅間山の雄大さと外輪山が作る独特な風景の虜になってしまった筆者が、2024年6月に訪れた時の様子とともにレポートする。

■車坂峠から外輪山を目指すルートは2つ

標高1,973m地点にある車坂峠登山口

 登山口となるのは、車坂峠(くるまざかとうげ)だ。車坂峠から外輪山へは「中(なか)コース」と「表(おもて)コース」の2本の登山道があり、筆者は登りで「表コース」を選び、下山で「中コース」を利用した。表コースは見晴らしがよく、八ヶ岳を見ながら歩くことができる。

表コースの開けた場所からは八ヶ岳が望める

 車坂峠から約1時間15分、外輪山の最初のピーク、槍ヶ鞘(やりがさや・標高2,294m)に到着する。これまで見えなかった浅間山が姿を見せ、雄大な山容に圧倒されてしまった。

 ただし、槍ヶ鞘からは外輪山や浅間山の全容は見えない。展望スポットであるトーミの頭まで行くと、全容を見ることができる。

■トーミの頭から望む外輪山と浅間山

トーミの頭から望む浅間山。噴煙が上がっているのを確認できる

 槍ヶ鞘からトーミの頭(標高2,320m)までは10分で到着でき、短い区間ではあるが、急でザレているので足元に注意が必要。

 トーミの頭からは外輪山と浅間山が見渡せ、これから歩く稜線の一部を見ることができる

これから歩く外輪山方面を見渡す
筆者の歩いた周回ルート

■浅間山外輪山の縦走「6つのピーク」

雄大な浅間山を望みながらの外輪山歩きは撮影ポイントが多く、ペースが上げられない

 浅間山の外輪山には6つのピークがあり、およそ1時間45分かけて縦走できる。進むにつれて変化する山容を楽しみながら歩ける。 

 トーミの頭の次に目指すのは黒斑山(くろふやま)だ。標高は2,404mで、外輪山の最高地点となる。トーミの頭からは25分ほど。

 黒斑山の北側、直線距離で約790m先にある蛇骨岳(じゃこつだけ)で標高は2,366m。蛇骨岳山頂には10人以上が優に休めるほどのスペースがあり、休憩をとるのにぴったりな場所だった。

 黒斑山、蛇骨岳までは樹林帯だったが、蛇骨岳をすぎると木々が少なくなり、岩が多くなってくる。登山道はザレている箇所もあるので、滑らないように気をつけたい。

蛇骨岳を通過したところから望む浅間山

 蛇骨岳を後にすると、次は仙人岳(せんにんだけ・標高2,319m)。仙人岳まで来ると、あたりは荒々しい風景に変わり、ここが火山帯であることを感じる。蛇骨岳を過ぎたところから浅間山の火口2km以内のエリアに入るので、ヘルメットの着用が推奨される。

 外輪山の最後のピークとなるのが、鋸岳(のこぎりだけ・標高2,254m)だ。ここまで来ると浅間山は目の前に迫り、大迫力の景色を望むことができる。

鋸岳山頂から望む浅間山

 鋸岳から賽の河原(さいのかわら)までは岩場の急坂となり、道幅は狭く、緊張する区間となる。焦らずに一歩一歩慎重に下りたい。