日本海からの湿った空気が新潟との県境の山々にぶつかって、大量の雪を降らせる長野県最北端にある飯山市。
今シーズンは、例年の1.5倍の積雪量だという。日常生活は大変だけど、地元経済を支える2つのスキー場にとっては、少雪が嘆かれる昨今において、恵みの雪となっている。つまり、スキーヤー、スキー場関係者にとって今年はアタリ年。
標高が高い乾いたJAPOWを目当てに外国人スキーヤーからの視線が集まりはじめている国際色豊かな斑尾高原スキー場。
一方、地元ちびっこスキーヤーからモーグル元ナショナルチームまでを虜にする地元密着型の地形豊かな戸狩温泉スキー場。
豪雪の山懐で元気に稼働する2つのスキー場を巡った。
【編集:BRAVOSKI編集部】
■「斑尾高原スキー場」 標高1,382m独立峰の北斜面に広がる、開業50周年を迎えるJ A P O Wの穴場
長野県飯山市および新潟県妙高市にまたがってそびえる斑尾山の中腹、斑尾高原にある「斑尾高原スキー場」。上級者から家族連れまで幅広いスキーヤーに支持され、昨今はフレッシュなパウダーを求めて国内外からスキーヤーが集まるスノーリゾートだ。ゲレンデのボトムで920mと比較的標高が高く、斜面は北〜北東へ向かっているのでいい雪質が長く保たれる。
案内してくれるのはこの人!
北村 明史(きたむら あきふみ)さん
●滑り手を虜にする乾雪のオンピステとMADAPOW
稀有な存在となったシングルリフトに乗って、標高1,340mのゲレンデトップへ上がる。パウダーエリアへ続く連絡路で、飯縄山と黒姫山、妙高山を視界に捉えた。ここ斑尾山は、前述の3座と戸隠山とともに北信五岳のひとつに数えられる。日本を代表するロングトレイル 、信越トレイル110㎞の起点といえば、しっくり来る人もいるだろう。
斑尾で生まれ育ったバックカントリーガイドの北村明史さんにスキー場内を案内してもらう。昨晩からの新たな積雪は10㎝ほどで、パウダーエリアはフルリセットまではいかない。しかし、さすがパウダーエリアをプロデュースした斑尾の主。新雪がたっぷり溜まった沢へ取材班を導いてくれた。
「できるだけ自然に負荷をかけずに、木々を間引いて、パウダーエリアとして森を開放していったのが、12年前くらいからです」
パウダーエリアは尾根に囲まれ、海から吹く西風の影響を受けにくく、風下となる斜面にふわっと上質な乾雪が降り積もる。次第に口コミでMADAPOW(斑尾パウダーの略)と呼ばれるようになり、コロナ禍以前は外国人スキーヤーを多く見かける国際色豊かなスキー場へと生まれ変わった。
パウダーをひと通り楽しんだ後は、オンピステへ。最長のスーパークワッドリフトに乗って、標高1,180mから長さ1,600mのチャンピオンコースを滑走。中級の広いグルーミングバーンはサラッとした軽い雪にエッジが食い込み、板が気持ちよくしなる。志賀高原の山並みを視界にとらえながら、千曲川が流れる飯山盆地へと滑り込んだ。
沢のナチュラルパイプ、パーク、ファミリーアドベンチャーコース…… バリエーション豊かな30コースが滑り手を飽きさせない。
隣接する新潟県側のタングラムスキーサーカスへリフトを乗り継いで行き来できるのも魅力のひとつ。マウンテンパス(共通券)を購入すれば、斑尾山を東から西まで180°の角度で全49コースを滑ることができるのだ。
去年まで、タングラム寄りの第11、12リフトがあるゲレンデへ行くと、メインゲレンデへスムーズに戻って来れないことが少々ストレスであったが、昨季にハイジ方面連絡路が整備され、縦横無尽にスキー場を飛び回れるようになった。パウダーエリア拡張しかり、斑尾高原スキー場は、年々進化を続けるスキー場なのだ。
●森に溶け込むようなツリーラン
明るい針葉樹の森にドライパウダーが降り積もるツリーランエリア。それぞれのパウダーエリアは、ゲレンデボトムに向かってすり鉢状に広がるので迷う心配はないだろう。
スキー場トップへ上がる第13リフトは、郷愁を誘うシングルリフト。降雪があった翌朝は、パウダーを求めるスキーヤーで行列が絶えない。振り向けば、飯山盆地に栄える飯山市街地から上越国境の山並みまで見渡せる。