最近、妻が登山の面白さに目覚めた。NHKの「にっぽん百名山」を欠かさず観るようになったし、登山靴とリュックも本格的なものを買い揃えた。通勤時にはエスカレーターを使わず、階段を上り降りするようになったというから、それなりに本気で取り組んでいるようだ。

 夫婦で共通の趣味ができるのは嬉しいことである。なので、当面のぼくの役目は、妻に「登山は辛いだけ」と思わせないことである。先日はステップアップのために瑞牆山へ登ったのだが、これまで低山しか経験してこなかった妻にとっては、ちょいとハードルが高い。そこで、がんばって山頂まで辿り着いたら、取っておきのスイーツ缶詰を開けることにした。じつは妻も缶詰が大好きなのだ。

 まるで馬の鼻面にニンジンをぶら下げるような作戦だったが、結果としてはうまくいき、無事登頂することができた。今回はそのときに持っていった2種類の缶詰を紹介しよう。

■極上の黒豆を使った甘味缶詰

エム・シーシー食品「味道・丹波黒」。黒豆を炊いた甘味の缶詰だ

 持参したスイーツ缶のひとつは、エム・シーシー食品が製造する「味道・丹波黒」(みどう・たんばぐろ)というもの。黒豆を甘く炊いた伝統的な甘味の缶詰であります。

 缶コーヒーと同じサイズの缶に入っていて、容量180gで価格が1,080円と、なかなかの高級品。粒が大きいことで知られる兵庫県丹波篠山市産の「丹波黒」を原料とし、そのなかでも特別に大きい「飛切極上」と呼ばれる等級の豆だけを使っている。

 この缶詰がすごいのは原料だけじゃない。豆を炊く際に、職人の目が届くようにあえて小さな銅鍋を使い、丸2日をかけてじっくり炊いているのだ。

■皮のひび割れ、シワを見逃さない執念

ふっくら美しく炊き上がった丹波黒(わかりやすいよう自宅で撮影)

 黒豆をきれいに炊くのは難しくて、たいていは皮にひびが入ったり、シワが寄ったりする。しかしこの缶詰の豆には、そういったものが混じっていない。豆に圧力が掛からないよう、浮力のある木製の落とし蓋を使い、弱火で長い時間を掛けて炊いているからだ。それでもひび割れたり、シワが寄ったものがあれば、缶に入れる前にひと粒ずつ取り除く。執念がなせる製法であります。

 「この皮、見た目より薄くて柔らかいね」と妻。

 「香りもいい。黒豆らしい香ばしさがあるよ」とぼく。

 甘さはしっかりしていて、登頂後の身体に沁み渡るようだった。

 ただし、注意すべきは豆と一緒に入っているシラップの量である。2人なら飲みきってしまえるが、1人ではもて余してしまう量なので、2人以上で開けるのがオススメであります。

※余ったシラップを山で捨てると、土壌の生態系などに影響を与えてしまう。絶対に捨てちゃダメ!