日本の缶詰は種類が多く、現時点でおそらく900種類近くあると思う。それほど多くの缶詰が販売されているのは、世界でも日本だけであります。

 ツナ缶ひとつとっても、使われる魚種はカツオ、キハダマグロ、ビンチョウマグロの3種類があり、たまに期間限定でクロマグロやミナミマグロを使った高級ツナ缶が現れる。それぞれに味付けが異なるうえ、明太子やコーンを合わせたお総菜っぽいツナ缶も販売されている。原料の多様さと味付けの多彩さが、これだけ多くの缶詰を生み出してきたのだ。

 そこに近年台頭してきたのが、「アヒージョ」という味付け(あるいは製造法)であります。ガーリックと唐辛子などを利かせたオリーブ油で具材を煮込むスペイン料理で、なぜか日本の缶詰メーカーに愛され、今では37ものブランドから68種類が販売されている。

 ちなみに、ツナ缶の種類は約90種類ある。数だけでいえばツナ缶に迫る勢いなのだから、大変なことなのであります。

■独自解釈のオリジナルアヒージョが台頭

自宅にあるアヒージョ缶。現在販売されているアヒージョ缶のごく一部だ

 アヒージョの缶詰が最初に発売されたのは、確か2010年のこと。国分「缶つま」シリーズの「マッシュルームのアヒージョ」が先兵だったと思う。それはまさしくスペインバルで出てきそうなおつまみの缶詰だった。

 しかし、その後2014年に明治屋が「おいしい缶詰・国産鶏のごま油漬(和風アヒージョ)」を発売したのがターニングポイントになった。同缶詰はオリーブ油ではなく、ゴマ油を使って和テイストに仕上げたのだ。

 以降、缶詰メーカー各社は独自に解釈したオリジナルテイストのアヒージョ缶を次々と開発していった。加熱によって食感がボソボソしがちな食材(例えばエビなど)も、油に浸すことでジューシーさを保てる効果があることもわかった。そんなこんなで、日本はアヒージョ缶だらけになったのであります。