山頂からの絶景を楽しむのは登山の醍醐味といえる。日中の景色だけでなく、ご来光もその1つだ。筆者も以前に「山頂から朝日を見たい」と夜間に登山道を歩くナイトハイクにチャレンジした。夜明け前に山頂に到着し、ご来光を楽しむのは想像以上の感動と達成感を感じたことを覚えている。

 山頂でご来光を見た感動が忘れられず、年に数回はナイトハイクで山頂からの特別な景色を楽しむようになった。今回はナイトハイクで気をつけたいことを、筆者の体験談と合わせて紹介したい。

■初めてのナイトハイクは「行ったことのある山」で

ナイトハイクは一度歩いたことのある山にすること

 ご来光を見るためには、夜明け前の暗い時間帯に出発する。ヘッドライトを使用して歩くが、夜の登山道は視界が限られるため、日中よりも危険度は増す。

 ナイトハイクは一度登ったことのある山を選ぼう。どんなルートで、どのくらいの時間がかかるのか、予想しやすいため、リスク回避につながる。また、リスク回避の観点からナイトハイクは1人ではなく、複数人で行動することをおすすめする。 

■山頂まで「1〜2時間で到着できる山」を選ぶ

 最初は山頂まで長くても1〜2時間で到着できる山を選びたい。それ以上行動時間が長くなると、睡眠時間の確保が難しく、体力面でかなりハードになる。危険箇所のない山を選ぶのも必要だが、それと合わせて山頂までの行動時間も考えたい。

■日の出時刻の把握と時間に余裕を持った行動を!

日の出時刻を事前に調べておかないと山頂に到着する前に夜が明けてしまう

 ナイトハイクでは事前に日の出時刻を調べておくのが必須だ。余裕のある行動時間の確保も忘れないようにしたい。

 筆者がナイトハイクを始めた当初、日中の行動時間で計画し、日の出時刻に合わせて出発したが、予想以上に時間がかかってしまい、目的地に到着する前に夜が明けてしまったことがある。ナイトハイクはヘッドライトの明かりを頼りに暗い登山道を歩くため、視界が悪く慎重に歩くようになる。日中よりも時間がかかることを想定しておきたい。

 山頂に向かう間に夜が明けてくると、日の出時刻に間に合うかが心配になり、焦ってしまう。その焦りが、思わぬ怪我の原因になったり、オーバーペースになったりする原因にもなるので危険だ。空が明るくなってきたからといって焦ることがないようにしたいのと、時間に余裕をもった計画で行動してほしい。

■夏がおすすめ

標高が高い分、山頂の気温は低い

 季節を問わず、低山であっても夜間は想像以上に寒い。夜明けの時刻まで山頂で待つ必要があるため、防寒着は必須だ。

 以前、3月の晴れた日に丹沢へナイトハイクに挑戦した時、標高が1,200mを超える場所だった。持っていた防寒着だけでは寒さに耐えることができず、ご来光を見る前に撤退、下山中に日の出を見たことがある。

 せっかく行くのであれば寒さで撤退することのないよう、夏山でもしっかりと防寒着の準備をしてほしい。

■ヘッドライトは300ルーメン以上!  赤色灯付きを選ぶ!

夜の登山道はヘッドライトの明かりだけが頼り。できるだけ明るいものを選ぼう

 ナイトハイクではヘッドライトの明かりが頼りになる。登山道を明るく照らしてくれるヘッドライトを選ぼう。

 150ルーメンのヘッドライトでナイトハイクをした時は、暗くて視界不良のため撤退したことがある。筆者の経験では300ルーメン以上のヘッドライトなら登山道を明るく照らしてくれて安心である。

 また、赤色光モードがついているタイプを選ぼう。人気の山の山頂では多くの登山者がカメラを持って日の出を待っている。カメラのレンズにヘッドライトの光が入り込んだり、撮影者の目を眩ませたりしないように配慮するのが山頂でのマナーだ。そうした時のために眩しさを感じにくい赤色灯を使うのがおすすめである。

暗闇では白色光よりも赤色光の方が眩しさを感じにくい

■バッテリーとヘッドライトの予備を忘れずに

ハンドライト。ヘッドライトと使用する電池が同じならバッテリーの予備としても使える

 行動中にヘッドライトの故障やバッテリー切れになると行動不能になってしまう。バッテリーの予備と、ヘッドライトの予備も必ず携帯したい。予備はハンドライト機能のあるライトでもよいので、故障に備えておきたい。

■暗闇の中を歩くための心強い味方

夜間の登山はラジオが心強い

 先述のとおりナイトハイクは2人以上での行動が基本だ。日中に比べ人も少なく、危険も多くなることから複数人で行動した方がリスク回避につながる。

 複数人であっても暗闇の中の山歩きは想像以上に心細く、小さな物音にも敏感になって不安を感じてしまう。筆者は必ずラジオを携帯し、聞きながら歩いている。これがあるとないでは大違い。周囲に存在を知らせることもできるほか、暗闇の中でも心強さを感じられるのだ。

 ただし、山中での物音は危険を知らせるサインでもあるため、イヤホンなどはせず、周囲の音が聞こえる状態にしておこう。