「同じ場所ばかり滑っていると飽きないの」と、言われることがあるかもしれない。滑っている側からすれば、場所は同じでも条件は毎日変わるから、飽きる理由がないのだ。滑るほどにスキー場の状況が手に取るようにわかり、精度の高い積雪予測や溜まっている場所の目星がつけられるホームマウンテン。ひとつのスキー場やBCエリアを知れば、その場所の魅力に気づくのは間違いない。ここからはホームマウンテンにまつわる様々な話をお届けしよう。

 ホームマウンテンを紹介してくれるのは、主に石川・富山・岐阜エリアの滑り手が集まり、それぞれの地元の面白い斜面や思い入れのある斜面へ滑りに行くユニット「White Vibes」。どこも白馬や信越といった名高いスキーエリアからやや離れているが、そこを滑り続けているローカルだからこそ語れる、雪やロケーション、スキー場やバックカントリーの魅力がある。そこでこの地域をホームマウンテンにする名手に、それぞれの特徴を教えてもらった。

■石川・セイモア周辺エリアと中田寛也

ホワイトバイブスの中心メンバー元起大智。フィルマーでもある彼は3か所のセッション全てに参加し映像を撮影し編集した

 白山をベースにするフォトグラファー中田寛也が、通い詰める白山セイモアを紹介。写真はセイモアでのセッションになる。

中田寛也(Hiroya Nakata)
幼少期からアルペンスキーで技術を磨く。東京の美術大学を卒業後、画家として東京で活動を始めるが、いつの間にか写真家に。現在は石川での撮影のほか、全国各地へ赴き、滑り手とセッションを繰り返しながら作品を残す。

●白山セイモアスキー場の概要

スキー場上部の眺めも美しい

 石川県のスキーエリアについてざっくり言うと、主なスキー場は県内最高峰の白山の麓に位置する2か所。一里野温泉スキー場と白山セイモアスキー場だ。いずれも金沢市内から60分から90分ほどのアクセスになる。仙台や長野市周辺のような地方の都市型スキー場とも言える。

 双方のスキー場とも規模はそこまで大きくないが、ファミリーが楽しめる斜面からスティープな所までが、ギュッと詰まっているのが特徴。各々の志向性やレベルに沿って、全開で楽しめるスキー場だ。

 なかでも、セイモアスキー場は急斜面コースが豊富。全9コース中、4コースが最大斜度35度以上の上級向け。スキー場は縦に長いレイアウトなので、降雪のタイミングと合えば白馬にも劣らないパウダーランが楽しめる。

●雪質や積雪量について

セイモアスキー場トップから尾根を歩きBCエリアへ

 両スキー場の標高はあまり高くはなく、リフトトップでおよそ1,000m。しかも、北陸特有の少し重めのパウダーとなる。だが、踏みごたえがあり、個人的にはとても気持ちよく滑れると思っている。1月中盤から2月中旬までが積雪も降雪も安定し、スキー場内でもパウダーが楽しめる。3月でも降雪の頻度は少なくなるが、寒の戻り具合でシーズン中並みに降雪は望める。

稜線を経てBCエリアまで行くと奥には加賀平野と日本海が望める

●バックカントリーエリア

滑り切れないほど楽しい沢地形があるが、複雑な地形のため経験者の同行は必須

 セイモアのBCエリアへはスキー場のリフトトップからハイクアップでアクセスする。登山届を出すのを忘れずに。30分も歩かずとも滑りごたえのある斜面が待っており、足を延ばしたぶん、向きも斜度もバリエーションのある斜面を選ぶことができる。そのほかにも白山、金沢周辺にはスキー場アクセスでなくても滑れるBCエリアは数知れず存在している。

 春になり、冬の間は閉ざされている道路の除雪が進めば、標高2,702mの白山へのアクセスもしやすくなり、滑走エリアは一気に広がる。そのため、雪さえつけば12月から6月まで県内でスキーが楽しめる。

 富山・立山や長野・白馬は決して遠いわけではない。ただ、県内で思い立ってすぐに良い雪を滑ることができる白山山麓地域があるという点において、このエリアは十分に満足できるホームマウンテンだ。

ホワイトバイブス隊長の佐伯岩雄はここでも直線的なラインを描く