早いものでスノーシーズンも後半となってきました。長野県小谷村にあるスキー場「つがいけマウンテンリゾート(栂池高原スキー場)」の上部に掛かる“栂池ロープウェイ”の運行が、3月2日より開始することが発表されました。栂池自然園や白馬乗鞍岳など、同スキー場上部に広がる中部山岳国立公園一帯は、登山やバックカントリーなど、冬山アクティビティの愛好者にとって大人気のエリアです。ロープウェイを利用することで、アプローチの時間短縮はもちろん、体力的にも温存することが可能になります。

栂池ロープウェイ早春運行について https://www.tsugaike.gr.jp/archives/11522

雷鳥保護の看板を運ぶ小谷山案内人組合のメンバー。当日は本降りの雨でした

 春山シーズンに先駆けて、雷鳥保護の注意喚起のための看板設置作業が、地元「小谷山案内人組合」のメンバーによって行われました。このエリアは国の特別天然記念物に指定されている雷鳥が多く生息しています。夏場は登山道の近くで営巣するほど人に慣れている(一説には外敵から身を守るため人間の気配がある場所を好む)鳥ですが、ストレスを与えないように距離を置いて行動することが求められます。

 また、道中には安全面での注意を促す表示やゴンドラ内の「長野県と長野県警による安全啓蒙YouTube動画のQRコード」、ロープウェイ乗車中には長野県警作成の【冬山リスク動画】の上映、さらにビーコンチェッカーなどが設けられています。増加するバックカントリー需要、それに応じたスキー場側の前向きな対応策が、各所に施されています。それらを利用して慎重な山行を心がけるのが、索道を利用して山に入る、せめてものマナーかと思います。

栂池自然園下、標高1,800mあたり。滑走可能な雪の量はありますが、沢には穴が空いている箇所もありました

 手軽に上部へ連れて行ってくれる索道の存在は大変ありがたいです。しかし、小雪傾向の今シーズンは、激しい温度変化も特徴です。標高の高いエリアでは下部とは雪の状態が大きく異なることを留意しておきましょう。場所にもよりますが、1か月以上季節が進んでいるような積雪量のところも。例年より一層地形的なリスクも高いと思っておいた方がいいでしょう。

 登山やバックカントリーの世界は経験してみないとわからない魅力があります。同時に生命を脅かすような重大な事故のリスクも高いです。自身の安全が仲間に委ねられることもありますし、大切な仲間の生命を預かっていることも忘れずに。今一度、装備やセルフレスキューについて見直しておくのもいいかもしれません。

 誰でも最初は初心者です。装備はお金で買えても経験と技術は簡単には手に入りません。長い時間と日々の研鑽を積み重ねて培ってきた経験と技術は尊いものですが、千変万化する自然環境においては、それも万能ではありません。信頼のおけるパーティーと行動を共にするか、少しでも不安を感じるようであれば、ガイド(クラブ)による冬山登山・バックカントリーツアーに参加するのも選択肢として有効だと思います。

数年前、白馬エリアでのバックカントリー中に出会ったツキノワグマ。最初は油断してカモシカだと思っていました

 加えて、春に近づくにつれクマの存在も気になります。冬眠しない“穴持たず”の個体例もありますし、気温の上昇や雪が減ってくるこの季節は遭遇する可能性も十分にあります。くれぐれも油断しない方がいいでしょう。取材の翌日、雨は雪へと変わり降り続いています。連休に向けてゲレンデコンディションに期待できそうです!