映画『キングダム 運命の炎』は、中国の戦国時代を舞台にした大人気の歴史アクション映画だ。主人公の信(しん)が、王となるべき少年・政(せい)と出会い、天下統一の夢を追う物語である。

 この映画の最大の見せ場である戦闘シーンは、兵庫県神戸市北区と西宮市の境にある「白水峡」で撮影された。白水峡は、六甲山の北側にある花崗岩が風化した岩山で、壮大な景観が広がる。

 残念なことに白水峡は立入禁止区域なのだが、登山道から白水峡を見下ろせるビュースポットがいくつもある。今回は、そんな白水峡で映画のロケ地を巡る、山歩きレポートだ。

■白水峡を歩く

映画『キングダム 運命の炎』のロケ地、白水峡登山口はバス停からすぐ(撮影:野口宣存)
映画『キングダム 運命の炎』のロケ地、白水峡登山口に看板はない(撮影:野口宣存)

 白水峡までは 、有馬温泉から阪急バスに乗って行く。乗車時間は約7分、「白水峡墓園前」停留所で下車する。登山口は看板もなくわかりにくいが、停留所から100mくらい離れたところに白いテープがたくさん貼ってあるので、それを目印にするとよい。

 なお国土地理院地図にはこの白水峡の登山道の記載はないが、登山アプリなどには載っている一般的な登山道である。そのため登山アプリを準備しておくと安心だ。

白水峡登山道にあった山火事らしきあと(撮影:野口宣存)

 わずかな距離ではあるが、登山口から尾根まで壁のような急登になっている。この急坂を登りきり尾根道に出ると、あとはなだらかな道が続く。

 登山口からしばらく行くと、山火事らしき痕跡があり、周囲には焼け焦げた臭いが漂っていた。同じ木が燃えるのでも、焚き火とはまったく異なる嫌な臭いだ。

登山道から、白水峡が見え始める(撮影:野口宣存)
白水峡登山道には白い目印テープが多く、道に迷いにくい(撮影:野口宣存)

 山火事らしきあとを過ぎると、徐々に木々の間から白水峡が見え始め、白水峡を見渡せるビュースポットが次々と現れ始める。

白水峡登山道のビュースポット。ここを過ぎると白水山を経由して六甲山に至る非常に長い登山道になる(国土地理院地図より引用)
白水峡のビュースポットから別のビュースポットを眺める(撮影:野口宣存)

 ビュースポットから見下ろす白水峡は、圧倒的な迫力だ。白水峡の底までは、かなりの高度差があるため、足がすくむ。崖から離れていても、近くの木にしがみついていないと、不安を感じるほどの高さだ。

白水峡のビュースポット。向こう側は崖(撮影:野口宣存)
白水峡は眺望がよい。下に見えるのは白水峡墓園(撮影:野口宣存)

 ここであのキングダム の壮大な戦闘シーンが撮影されたのかと思うと、感無量である。

 なお白水峡は、キングダムだけではなく、『暴れん坊将軍』、『必殺仕事人』、『水戸黄門』、『銭形平次』、『逃亡者おりん』など、時代劇の定番ロケ地としても有名だ。筆者は個人的に好きな『逃亡者おりん』の戦闘シーンと重ねながら、白水峡を見るのも楽しかった。

キングダムの戦闘シーンの場所を探す(撮影:野口宣存)
崖の下をのぞくと足がすくむ(撮影:野口宣存)

 ロケ地としては使われていないようだが、同じく六甲山の北側にある蓬莱峡も、白水峡とよく似た景観を持つことで知られている。