標高が1,000mを超えるような山では冬季は積雪し、積雪がなくても凍結などにより、チェーンスパイクや軽アイゼンなどが必要で、いつもとは勝手が違う。冬はハイキングをしないという人もいるだろう。

 そんなハイキングを敬遠している人に、冬こそ歩きたいルートを紹介したい。

■伊豆の3市町にかかる遊歩道「南伊豆歩道」

 紹介するのは静岡県の伊豆半島の下田市、松崎町、南伊豆町にかかる「南伊豆歩道」だ。3市町に全部で10のセクションがある。

入間港から千畳敷へと続く道。大海原を眺めながら歩ける(撮影:山歩ヨウスケ)

 セクションで歩くことも可能であるが、最近では、この遊歩道をつなげ、何日間かかけて歩くことを「南伊豆ロングトレイル」とし、紹介されることもある。今回は南伊豆歩道の10あるセクションの中の1つを紹介したい。

■「中木〜入間」区間のセクションハイク

 紹介する区間は南伊豆町の中木魚港(なかぎぎょこう)から入間魚港(いるまぎょこう)までの集落をつなぐ「中木〜入間」区間だ。中木から入間まではおよそ2.6km、時間にすると1時間30分ほどになるが、今回はもう少し足を延ばし、千畳敷も合わせて6.5kmほど、大体4時間の道のりを紹介する。

 スタート地点となる中木漁港は小さな漁港であるが、夏には海水浴客で賑わいを見せる場所だ。中でも「ヒリゾ浜」は有名で、歩いて行くことができないヒリゾ浜への渡し船が発着する中木漁港は海水浴の時期には混み合う。

中木漁港の駐車場。冬季は無料で利用できるが夏期は有料になる(撮影:山歩ヨウスケ)

■ジオを感じる中木の巨大な柱状節理(ちゅうじょうせつり)

 中木漁港からスタートすると、まず見どころと言えるのが柱状節理だ。地下の溶岩やマグマが地上に出た際、冷えて縮む時に五角形や六角形の柱状に割れ目ができることを柱状節理という。柱状節理を実際に目の前にすると、自然が作り出す造形に驚かされる。

中木漁港から見える柱状節理。岩肌に縦に線が入っているのが分かる(撮影:山歩ヨウスケ)

 以前は真下まで行くことができたが、現在は落石の危険があるため、立ち入り禁止となっているが、漁港の駐車場から見る柱状節理の大きさには迫力を感じるだろう。

■中木漁港から急登を経て念仏洞へ

南伊豆歩道「中木〜入間」区間の入り口(撮影:山歩ヨウスケ)

 漁港から宝永軒寺院を抜けると、南伊豆歩道の入り口が見えてくる。ここから尾根に出るまでは急登となるが、尾根まではそれほど長くはかからないので一気に登り切ってしまおう。

 登り切ったところにベンチがあり、その先には祠がある。さらにそこから十数メートル進むと念仏洞(ねんぶつどう)がある。

念仏洞。入り口は小さいが中は広い。入り口に1体、中に2体の石仏が安置されている(撮影:山歩ヨウスケ)

 念仏洞の中は幅が2m20cm、奥行きが2m60cmほどの、岩をくり抜いて作られた石室だ。かつて航海の安全を祈って土地の老人たちが念仏を唱えたところであると言い伝えられている。