■荒島岳の冬はすごいんです

 福井県大野市の標高1,523m「荒島岳」は、美しい山容から別名「大野富士」と呼ばれている日本百名山だ。

 中腹に広大なブナの森が広がり、春の新緑、秋の紅葉それぞれ見事だが、冬季は大野盆地から吹き上げる季節風と、たくさんの雪によって姿は一変し、とても荒々しく、まるで標高3,000m級の北アルプスにいるような迫力のある雪景色を堪能できる。

 筆者はそんな荒島岳の魅力にとりつかれ、毎年登ってとうとう今度で10回目を数える。日帰りで迫力ある雪山を楽しめるなんて最高だと思う。

 登山道の注意点や装備についても記載するので、ぜひ参考にして欲しい。

■荒島岳のコースは4つ

勝原(かどはら)コースから荒島岳へのルート(国土地理院を引用して作成)

 荒島岳は全4つのコースがある。

 一番登られているのは、ブナ美林を歩く「勝原(かどはら)コース」だ。次に日本百名山でおなじみの深田久弥が歩いたとされる「中出(なかで)コース」、2012年誕生の新コース「新しもやまコース」、あまり歩かれない「佐開(さびらき)コース」。

 今回は「勝原コース」を紹介する。

■旧スキー場登山口からシャクナゲ平へ

旧勝原(かどはら)スキー場を歩く(撮影:鶴岡 亜矢子)

 筆者が登ったのはある年の1月下旬。晴れたり曇ったりという天気だった。

 国道158号線から少し入ったところに登山口の旧勝原スキー場がある。約20~25台くらい駐車可能。トイレは使用禁止となるため注意が必要だ。この時は10台以上の車が既に停まっていた。

 旧スキー場内の急こう配を登ってから、ひたすら森の中を歩く。標高が少しずつ上がるにつれて、深い森に包まれていく。徐々にサラサラの雪になってキュッキュツと鳴る足元の雪の音が楽しいが、永遠に森をさまようのではないかと思える長さだ。

樹林帯の中をただひらすら登っていく(撮影:鶴岡 亜矢子)

 急こう配を登るとその後はなだらかになり、「シャクナゲ平」へ到着する。雪山キャンプをする方が多く、筆者が登った日も大きなテントが張られていた。

■シャクナゲ平から難所「もちが壁」へ

もちが壁手前の美しい樹氷を蓄えたブナ(撮影:鶴岡 亜矢子)

 シャクナゲ平でゆっくり栄養補給を行い、意気揚々と山頂へと向かい荒島岳最大の難所「もちが壁」にさしかかる。雪が深く傾斜もあり、高度感抜群の落ちると危ない場所だ。太ももまで雪に埋まるが、輪かんじきをはくと滑り落ちてしまう。ここは膝で雪を固めて、ピッケルをしっかり刺してからアイゼンを装着した足で一歩ずつ着実に確保を行い前進する。

もちが壁を越えると視界がぐんとひらける(撮影:鶴岡 亜矢子)

 もちが壁を登ったあたりから視界はひらけて、雪でモンスター化した木と、こんもりと雪を抱えた荒島岳の幻想的な姿のみの世界となる。数秒の間にも晴れたり曇ったり、天候は安定しない。頂上に着くころに晴れて欲しいと心からで願った。

頂上まであと少し!(撮影:鶴岡 亜矢子)