日本一の山として富士山は誰もが知っていることだろう。富士山だけを被写体にカメラに夢中になっている人も多い。特に冬の富士山はすばらしく、山容の上部一帯が雪に覆われた姿はいつみても見事としか言いようがない。

 筆者は山頂から富士の景色が見えるかどうかで登る山を探す時がある。関東圏に住んでいる人ならば「富士山の景色」を基準に山を探す人は少なくないのではないだろうか。今回はそんな富士の絶景を楽しみたい人にこそ行ってもらいたい山を紹介したい。

■都心から車で2時間30分、三ッ峠山駐車場から目指す「清八山」と「本社ヶ丸」

 紹介するのは清八山(せいはちやま)と本社ヶ丸(ほんしゃがまる)だ。清八山は標高1,593m、本社ヶ丸は標高1,630mで、ともに「大月市秀麗富嶽十二景(しゅうれいふがくじゅうにけい)」に選定されている。

 秀麗富嶽十二景とは、富士山を望む優れた景観がある場所として、大月市が1992年に定めた12の山域のことだ。清八山と本社ヶ丸はセットで12番目の山頂として数えられている。

山梨百名山にも選定されている本社ヶ丸。山頂からは富士山を望める

 清八山、本社ヶ丸へのアプローチは笹子(ささご)側からや、御坂峠(みさかとうげ)からなどいくつかあるが、ここでは三ッ峠山(みつとうげやま)登山口から登るルートを紹介する。

 三ッ峠山登山口までは都心からマイカーで2時間30分ほどと近く、アクセスがいい。さらに、清八山までは大半が林道歩きとなるので初心者にも登りやすい山だ。

■静かな林道歩き。まず目指すのは清八山

 三ッ峠山登山口から登ると、清八山、本社ヶ丸の順に登頂する。登山口の林道のゲートを抜けると、そこから大幡八丁峠(おおはたはっちょうとうげ)までは静かな林道歩きとなる。

冬枯れした林道を歩く。少し寂しさはあるが、日差しが届いて気持ちがいい

 単調な林道だが、森の木々に注目しながら歩いてほしい。運がよければリスの姿を見ることができるからだ。筆者もリスを2匹確認したが、警戒されてしまったのかすぐに走り去ってしまった。

 登山口から45分ほどで大幡八丁峠に到着する。大幡八丁峠は林道の終点地にあり、清八山方面と御巣鷹山、三ッ峠山方面への分岐となっている。

 大幡八丁峠から清八山までは登山道となり、勾配も急になる。しかし長くはなく、25分ほど歩いたところで最初の目的地、清八山に到着する。 

山頂には立派な松の木が生えており、まるで浮世絵のような風景が広がる
南アルプスの山々。山頂付近は雪で白い

 山頂にはこじんまりとしたスペースがあるので、絶景を眺めながら休憩できる。山頂では富士山のほかにも、南アルプスや八ヶ岳を眺望できる。

■アップダウンを繰り返しながら富士山を横目に本社ヶ丸へ

 清八山を通過し、本社ヶ丸までは小刻みにアップダウンを繰り返す。稜線歩きとなるので、開けたところでは富士山を望むことができ、景色を楽しみながら歩ける。

本社ヶ丸に向かう途中、開けた場所から望む富士山。左に見えているのが御巣鷹山

 本社ヶ丸までの登山道はいくつか高低差のある岩場があり、登山道は狭く、両サイドが切り立った崖になっている箇所もある。危険を感じるようなことはないものの、適度な緊張感を持って歩きたい。

 清八山からアップダウンを繰り返しながら30分ほど歩くと本社ヶ丸に到着する。山頂直下は岩場になっているが、巻道があるのでそちらを利用した方が安心して歩ける。本社ヶ丸からは清八山と同様に富士山が望め、南アルプスや八ヶ岳の展望も楽しめる。

本社ヶ丸山頂から望む八ヶ岳。空気が澄んでいる冬はよく見える

 例年、12月には降雪もあるようだが、積雪は少ないものの凍結するため、チェーンスパイクや軽アイゼンは必ず携帯するようにしたい。

 山頂で景色を楽しむには防寒対策も必須となる。帽子やマフラー(ネックウォーマー)に手袋などしっかりと防寒して古風な景色を楽しんでほしい。

 

【アクセス】
東富士五湖道路・河口湖ICより御坂みち経由で28分(15.9km)

【登山ルート】
三ッ峠山登山口→(45分)→大幡八丁峠→(25分)→清八山→(30分)→本社ヶ丸→(55分)→大幡八丁峠→(40分)→三ッ峠山登山口

●【MAP】三ッ峠山登山口(三ッ峠県営駐車場)