関西に住んでいるとテント泊できる場所が限られており、どこでテント泊登山をしようかと、いつも悩んでしまう。できれば、山小屋が近くにあって安全で、水の調達もしやすい場所がいい。

 この記事で紹介する奈良県の「八経ヶ岳(はっきょうがたけ)」は、関西で数少ないテント泊ができる山で、山小屋があり、売店も利用できる。そんな八経ヶ岳をロングトレイル気分で味わえる穴場ルートを紹介しよう。

■ロングトレイル気分で歩く穴場ルート

栃尾辻まで登ってくると、平らな登山道が続く場所が多い

 「八経ヶ岳」は、奈良県天川村(てんかわむら)にある標高1,915mの山で日本百名山のひとつ。7月は国の天然記念物「オオヤマレンゲ」が咲くことでも有名だ。

 週末は県内外から多くの登山者が訪れ、「行者環(ぎょうじゃがえり)トンネル西口」にある駐車場は、早朝から満車になってしまうほど人気の山だ。

 トンネル西口からのルートは日帰りが可能だが、ここで紹介する「川合八経ヶ岳(かわあいはっきょうがたけ)ルート」は、往復距離約23.8km、所要時間が登り約6時間、下り約5時間のロングルート。しかも、テント泊装備での登山となると、相当な体力が必要だ。

 しかし距離が長い分、ゆるやかな登山道が多く、ロングトレイル気分で樹林帯の中を鳥のさえずりを聞きながら歩けるため、毎年訪れるほど筆者のお気に入りのルートとなっている。

●一気に標高を上げる、川合登山口から栃尾辻

栃尾辻の避難小屋

 2024年5月下旬の午前6時、標高約600mの川合登山口から登山開始。登山口から避難小屋のある「栃尾辻(とちおつじ)」まで約3時間かけて、針葉樹林帯の中をひたすら登っていく。早朝の涼しい時間帯、暑くなる前に登り切りたい場所だ。

 栃尾辻にくると扉のない、土の地面がむき出しの避難小屋がある。中は薄暗いので、小屋の外でしばらく休憩。「弥山小屋(みせんごや)」までは、時間にして残り半分の3時間ほど。そして、ここからが筆者の大好きなロングトレイル気分を味わえるルートとなる。