啓蟄(けいちつ)をとうに過ぎ、越冬していたテントウムシが軒下に顔を出したりしていますが、山間部では繰り返しまとまった降雪に見舞われ、真冬のような景色となっています。長野県北部に住む筆者にとって、3月に入ってからの方が冬本番のような一風変わった年です。

 いつまで経っても訪れない春。募る釣り欲に勝てず、県を跨いでお隣の群馬県へとフライフィッシングへ出かけました。

■春を求め、県境を越えて山あいの渓へ

浅間山の裾野。標高が高いせいもありますが、群馬県に入っても山中には残雪というには申し訳ないほど、降ってから時間が間もない雪が残っていました

 浅間山北麓を通って、例年春によく訪れる渓を目指しました。山岳渓流ですが、比較的開けた地形のため入退渓も容易です。ヤマメが優勢ですが、イワナも混じる場所です。この日の釣りを楽しみに、例年の虫たちの様子を思い浮かべながら、数日前から暇を見てはコツコツとフライを巻いていました。

 小雨まじりの空模様、目的の渓に到着すると気温は約6℃で、予報より遥かに低い温度です。水温は4.2℃でした。ただ、車道から見下ろした淵の駆け上がりには、小さなヤマメたちが泳いでいます。樹間からそっと覗いたつもりが、人影に敏感に反応してあっという間に逃げ去ってしまいました。管轄する漁協の遊漁券は少々高めの値段設定ですので購入に慎重になっていましたが、ここで釣りをすることに決定。「フィッシュパス(電子遊漁券)」で決済を済ませます。