筆者が暮らす栃木県では冬になると鬼怒川(きぬがわ)や那珂川(なかがわ)といった大河川においてウグイやオイカワ(どちらもコイ科の淡水魚)を狙ったいわゆる、寒バヤ(冬のウグイ)、寒バエ(冬のオイカワ)釣りが昔から地域の人たちの間で盛んに行われている。これらの魚は、冬ならではの澄んだ水質と捕食している餌の関係から身に臭みがなく、とてもおいしいとされている。特に年配の方を中心に今でも家に持ち帰って食べる人が多いといわれている郷土の魚である。

寒バヤ(寒バエ)釣りは冬の鬼怒川の風物詩

 筆者はこれらの魚がとてもおいしいという話を知っていたのだが、実際に食べたことは一度もなかった。今回そのおいしさを確かめてみたいと思い、鬼怒川に釣りに出かけた。釣った魚を実際に調理して食べてみたので、その様子をレポートする。また、ウグイとオイカワの食べ比べもしてみたので、興味のある方はぜひ最後まで目をとおしていただきたい。

■獲物確保がいきなり難航!  寒バヤのポイントはいったいどこに?

鬼怒川(きぬがわ)は栃木を代表する郷土の川

 今回筆者が寒バヤ釣りに訪れたのは、栃木県宇都宮市内を流れる鬼怒川。春にはヤマメとニジマス、そして夏から秋にかけてアユ釣りで賑わう利根川水系の一級河川である。

 一年のうちでもっとも寒い1~2月。寒バヤは、少しでも水温が高い場所、さらに水温が安定した場所を求めてトロ場(ある程度の水深があり、流れが緩やかな場所)に集まるとされている。これは多くの川釣り専門書にも書かれている昔からの定説であり、あの昭和の人気釣り漫画『釣りキチ三平』でも紹介されていたことである。

トロ場のポイントを見つけたと思ったら、そこにはすでに先行者の姿が

 当日は、グーグルマップの衛星写真をたよりに、「トロ場」のポイントを探しまわったのだが、これがなかなか見つからない。冬季の鬼怒川流域では雨がほとんど降らないため、水量が少なくどこも水深の浅いポイントばかり。ようやく橋の下にトロ場を見つけたと思ったら、そこにはすでに先行者がいて筆者が入れるスペースは無かった。獲物の確保どころか、ポイントも見つけられないまま朝からすでに4時間以上が経過してしまっていた。

■ついに見つけた!  寒バヤのポイント

水深が浅く水の流れが緩やかなエリアに多くの寒バヤたちが集まっていた

 その後は半ばあきらめムードで川沿いに車を走らせていると、河原に数台の軽トラックが停まっているのを発見した。どうやら寒バヤ狙いの釣り人たちのようである。しばらく遠巻きに彼らの様子を見ていると、連発とまではいかないもののポツポツと釣れていた。

 近所に住んでいるという高齢のお父さんたちと挨拶を交わしたのち釣果について尋ねてみると、2時間ほどでウグイとオイカワがそれぞれ10匹前後釣れているとのことだった。偏光サングラス(太陽光の乱反射を軽減する釣り用のサングラス)越しに川の中を覗いてみると、本命とおぼしき魚の群れがギラギラと煌めいてるのがあちこちに確認できる。この場所は釣れそうだ。

 川幅は20mほど。水深は深いところでも50㎝ほどしかなく川底が丸見えだった。川の流れがとても緩やかという意味ではトロ場ともいえるのだが、ここはあまりにも水深が浅く、筆者がイメージしていたトロ場とはかけ離れていた。川底が見えないほどの深い場所をずっとイメージしていたため、こんな浅場にたくさん群れていたとは本当に意外だった。

 もちろん、水深のあるトロ場にも寒バヤたちはいるのだろうが、そういった適した場所が近くに無ければこのような浅い場所にも寒バヤたちは集まってくるのだろう。この日は風のない冬晴れの暖かな一日だった。太陽の光が水中によく届く分、水深の浅い場所の方が水温が上がりやすく快適に過ごせるのかも知れない。

 何事も机上の知識だけで分かった気になるのは思い上がりなのだろう。とても些細なことだがいい勉強になった。

■鬼怒川(本流)での寒バヤ釣りに長竿は必須

釣り人の気配を感じると魚たちは遠くへ逃げてしまう。このため長竿でないと釣りが成立しない場合もある

 無事に寒バヤのポイントを見つけることができたため、さっそく釣りを開始することにした。寒バヤ狙いの釣り人たちが多く集まる鬼怒川の本流部は川幅が20~30mありとても広い。このため使用するロッドの長さは、最短でも5m以上あるような長尺のものがよいだろう。

 特に水深の浅いポイントなど魚の警戒心が強くなる場所では、魚が釣り人の気配を感じて遠くに逃げてしまうことがよくある。このため短いロッドでは魚のいるポイントまで届かない場合もあるので注意が必要だ。ちなみに今回、筆者は水の中には入らずに陸から釣りをしたこともあり、長さ6.4mの長竿を使用した。そしてこの長い竿のお陰で、遠くにいる警戒心の低い寒バヤたちを簡単に釣りあげることができた。

鬼怒川で釣れた寒バヤ。地元の人たちはこの魚を「ザコ」や「アイソ」と呼んでいた
鬼怒川で釣れた寒バエ。地元の人たちは「ガンガラ」と呼ぶ

 そして、寒バヤと寒バエをそれぞれ10匹づつ確保したところでこの日の釣りは終了。実釣時間はおよそ90分でかなりの好釣果に恵まれた。

釣りあげたウグイとオイカワたち。小型のアクリル水槽があると魚をじっくりと観察できるのでおすすめ

●寒バヤ&寒バエ釣りで使用した道具

【ウキ仕掛け用のタックル】
・ロッド:清流用の延べ竿 6.4m
・天井糸:フロロカーボンライン 0.8号 1m
・水中糸:ナイロンライン 0.6号
・ウキ:トウガラシウキ
・ウキ用のゴム管:ウキのサイズに合ったもの
・オモリ:ガン玉(重さはウキの浮力に合わせて調整)
・自動ハリス止め:ハリ交換が簡単におこなえる
・ハリ:袖またはヤマベ針3~4号(ハリスは0.3~0.4号)
・エサ:紅サシを使用。白サシのほか現地調達の川虫でもOK

【あると便利な道具】
・小型のハサミ:ラインを切る際に使用
・エサ入れ:サシのための専用容器
・ハリ外し:魚がハリを飲んでしまった際に使用
・ビク:釣った魚を生かしておくための魚入れ
・小型アクリル水槽:釣った魚を横から観察できる
・タオル:濡れた手を拭くために使用