いち早く紅葉の便りが届きはじめた北海道渓流釣り好きにとっては憧れのトラウトパラダイスでもあります。大型の魚たちを狙っての遠征は釣りの醍醐味ですね。その一方、サイズは小さくとも美しい渓流魚もいます。北海道にしか生息しない「オショロコマ」の可憐な姿を見たくて道内をめぐりました。

■北海道にだけ生息する“オショロコマ”

オショロコマ。イワナに似ていますが、煌びやかで渓の宝石のよう

 オショロコマという名前を聞いて、すぐに魚だとわかる人はどれだけいるでしょうか。この不思議な名前の魚は、トラウト、鱒(マス)の一種で冷水性のイワナの一種とされています。イワナに類似している魚体には有色の斑点が散りばめられており、比較的目立つパーマークや白点と相まって煌びやかな印象があります。

 世界的には朝鮮半島北部やロシア東部、北アメリカ、カナダの一部に生息しているようですが、日本では北海道のみに生息しています。以前は降海型の「ドリーバーデン」の河川残留型、同種であるとされていましたが、近年は亜種とされています。

■一路、道北へ! 釣果はあるけれど「オショロコマは、どこにいるの?」

絶景が連続する北海道。ドラマチックなシーンの連続にわき見運転注意ですね

 ほぼ毎年訪れている道内ですが、その都度メインで狙っている魚は違います。今回の北海道での釣り旅(登山も)は、大雪山を囲むように移動しながら、いくつか目ぼしい渓を訪れる予定でした。可能な限り初めての流れでフライロッドを振るのを楽しみにしているのですが、ふと「最近オショロコマと出会っていない」ことに気づきました。

 道内を移動中、雄大な景色に目を奪われながらも、つい気になってくるのはオショロコマのこと。以前は登山の途中に竿を出すと入れ食いだったのに、本当に数が少なくなっているのでしょうか。

気配を感じて目を向けると若いエゾシカがこちらを見つめていました

 まずは大雪山系の南部の渓へと向かいました。ニジマスとアメマス(エゾイワナ。分類が困難なため、便宜上アメマスと表現しておきます)を狙って入ったのですが、その上流にはオショロコマもいるようです。

 ヒグマが怖いのであまり車から離れたポイントへは行かないよう、車をゆっくりと走らせて林道から良さそうな場所を探します。駐車に適した広いスペース。流れへと降りる踏み跡まであります。釣り人が頻繁に訪れるのでしょう。あまり釣果は期待できませんが、そこから入渓することにしました。

数匹泳いでいたうちの一匹。比較的入渓が簡単な場所で良型トラウトが釣れるありがたさ

 30mほどの上流にあった流れ込みとプール。よく観察していると、魚影がいくつか見えました。そっとドライフライを流しますが、なかなか反応はありません。フライを沈めてみようか思っていた矢先、急に向きを変えた魚がフライに飛びつきました! なかなかの良型です。慎重に手元に寄せてくると、35cmほどのアメマスでした。その後も釣れるのはアメマスばかり。もちろん嬉しいのですが、オショロコマの所在が気になります。しかし、車止めのゲートから奥へと進むのは少々気が引け、この日の釣りを終えました。