手つかずの自然が残る北海道の知床は、1964年に国立公園に指定され、今年で60周年を迎える。さらに、2005年に世界自然遺産に登録されてから来年で20周年。これを記念した事業を周知するためのメディア向けフォーラムが、2024年5月7日に行なわれた。会場となったのは、新宿御苑インフォメーションセンター内にある「ナショナルパークディスカバリーセンター」。その内容と、知床をメインに展開されるイベントについて紹介していきたい。

■2年に渡り知床の情報発信とイベントを展開

ザ・ノース・フェイス(ゴールドウイン)やスノーピークも事業をサポート

 「知床国立公園60周年・世界自然遺産20周年」を記念して展開される事業は、「海と、森と、人がつなぐ。」をテーマに、2024年4月から2026年3月までの2年間に渡って知床に関する情報発信やさまざまなイベントを実施するというもの。

 この事業の目的は、こうした周年記念を機に、まずは知床ならではの価値を再認識し、同時にしっかり保全していくこを考えること。そして、感動や学びのある自然が持続可能となるためのルールや、リスク管理についても発信していくこと。これらの持続可能への取り組みは、これまでも地域で行なってきたが、今後は観光利用している人たちも一緒に取り組んでもらえるような働きかけも予定している。

 2年間に渡って行なわれるイベントの内容は、知床羅臼雪壁ウォーク、サスティナブルフェス、カラフトマスや鮭の遡上が観察できるツアー、パネル展示、講演会など多種多様。このほか、スイレンやオニアザミなどの外来種の駆除や、登山道の整備といった保全活動への参加も含まれている。

 この記念事業を主催するのは、環境省、林野庁、北海道、斜里町、羅臼町などの国や自治体。そして、ともに国立公園オフィシャルパートナーであり、斜里町と包括連携協定を結ぶゴールドウイン、羅臼町と包括協定を結ぶスノーピークが連携する形で事業をサポートする。

■国と自治体、アウトドアブランドがタッグを組んで事業を展開

左から、羅臼町長の湊屋 稔氏、スノーピーク社長の山井 太氏、ゴールドウイン社長の渡辺 貴生氏、斜里町長の山内 浩彰氏。それぞれが知床について語り合う

 メディア向けフォーラムの会場には、斜里町長の山内 浩彰氏、羅臼町長の湊屋 稔氏、ゴールドウイン社長の渡辺 貴生氏、スノーピーク代表の山井 太氏が登壇し、トークセッションも行なわれた。

 「知床の自然はどこを切りとってもすばらしい。海が波打たず音がしなくなったら流氷がきているということ。そんな自然のなかで暮らしている。圧倒的な自然がある知床にぜひ来てほしい」と知床の自然を伝える山内氏。湊屋氏も「生まれたときから知床に住み、家の裏には熊が出たり、目の前を鹿が歩き、空には2mのオオワシがいるのが当たり前」と知床ならではの日常を語り、「観光客が訪れるようになり、フィールドの楽しみに気づかされた」と自分が暮らす場所の独自性を再発見。

 どちらも釣り好きで交流があるという山井氏と渡辺氏からは、「撮影やギアのテストで知床に行っことがあるが、地元の人は生まれたときからいるのでみなさん突拍子もない自然があることに気づかない(山井氏)」、「絶壁に囲まれた知床は海から見ても壮観で、日本にもこういうすばらしいところがあったのだなと思った。未知の自然であり、今は大切なところ(渡辺氏)」とそれぞれ知床への驚きや感動に関する話が出た。

 また、トークイベントでは知床の自然の魅力とともに、ヒグマと遭遇するリスクについても触れられた。

■9月には2日間に渡るフェスティバルを開催

 今年の9月14日~15日の2日間、「知床国立公園60周年・世界遺産20周年」の記念事業のイベントのひとつとして「シレトコ アドベンチャー フェスティバル 2024」が開催される。斜里町と羅臼町の両町で実施され、会場は、斜里町が知床自然センター「KINETOKO」、羅臼町が羅臼オートキャンプ場となる。

 初日はそれぞれ、映画上映やアスリートによるトークショー、キャンピングイベントと特産品を味わえるディナー&焚火トークなどを予定。2日目は羅臼町で朝ランニングを終えてチェックアウトした後、斜里町に移動してそちらのイベントに参加できるなど、2つの町のイベントを楽しめる内容を企画中だ。

 このイベントをはじめ、2年に渡る多数の関連イベントに参加し、世界遺産として認められた知床の圧倒的な自然とそのパワーをぜひ体験してみよう。

「知床国立公園60周年・世界遺産20周年」のイベントガイド