春が待ち遠しいが、まだまだ冷え込む日が続くこの季節。寒い時期は里山をはじめとする低山ハイキングに最適だ。夏は虫が多くジメジメと暑い低山も、寒い季節であれば空気が澄んでいる。そのため歩くだけで心地よく、標高が低くても山頂からの景色を楽しめることが多い。凍結や雪の心配が少ないことも冬の低山の魅力の一つだ。

 ただし低山ハイキングは初心者でも気軽に始められるが、実は危険も多く潜んでいる。今回は登山歴7年の筆者が体験した、冬の低山登山の「天国と地獄」のエピソードを紹介しよう。

■低山ハイキング!  地獄エピソード3選

●1. 登山者が少なく、道が整備されていないことも

登山者の少ない低山は道が鬱蒼としており少々恐怖を覚えることがある

 百名山やアルプスの山々など人気のある山に比べ、穴場スポットや里山などは登山道の整備頻度が低い場所もあり、場合によっては草に覆われ鬱蒼としているなんてケースもちらほら見聞きする。鬱蒼としているだけなら別にいいかと思い、歩みを進めてみると気づかないうちに蛇や蜂などを踏みそうになり、ヒヤッとしたことがある。筆者は一度、階段に作られた蜂の巣を踏みそうになり、そのまましばらく蜂に跡をつけられた苦い経験があり、草木が生い茂る鬱蒼とした道に恐怖心を覚えるようになった。

 また、登山道に草木が侵出してくるせいで視界が狭まり先が見えず、樹木に日差しが遮られて暗くて進むのに勇気が必要なことも何度かあった。冬はとくにハイキング客も少なく、本当に進んでも大丈夫なのか不安になり、撤退したこともしばしば。低山は木々が鬱蒼と茂っているので定期的な整備がされないと、登山道がわかりにくいことが多い。

 実際に低山での道迷いによる遭難事故も多く報告されている。「低山だから大丈夫」という先入観は捨て、迷いやすい一面があることに留意して事前にしっかりハイキングコースを確認し、不安に思えば撤退することも視野に入れよう。

●2. まさかのクマ出没! の危険性も

 登山者なら登山口やルート上で「クマ出没注意」の看板を目にすることも多いだろう。登山客が年中行き来する人気の山は野生動物も人の気配を察知して登山道へ出てこないことも多い。しかし、マイナーな山で登山客が少ないと人の気配がないので、登山道に動物が出てくることがある。

 「冬はクマも冬眠するから安心だろう」なんて思っていたら危険だ。最近は暖冬の影響などにより、12月や1月など寒いシーズンにもクマの目撃情報が増えている。筆者は一度11月下旬にラジオを聴いたり、会話をしながら里山を登ったものの、近くで頻繁にガサガサという音がするので怖くなって撤退したことがある。その日の夜、筆者が数時間前まで登っていた山でクマの目撃情報が数件あったというニュースを見て、あとからゾッとしたことがある。

 クマ以外にもイノシシやサルなど、野生動物と遭遇するリスクはどの山でもあるが、標高の低い里山は動物の棲み家となっていることが多く、とくに注意が必要だ。事前に動物の目撃情報をしっかり調べて、出没のリスクがあれば撤退したり、熊鈴を持ち歩いたりするなどの対策を心がけたい。

熊出没情報を耳にしたあとに見ると若干の恐怖心が

●3. 想定外の寒さ…… 山頂ランチを諦めて撤退

 低山は標高の高い山に比べて積雪の心配が少なく、寒い時期も楽しめるのが魅力のひとつだ。しかしながら、山頂付近や日陰はかなり気温が低く、場所によっては凍結している場所もある。

 筆者は一度、1月に標高1,000m弱の山にハイキングに出かけた際、「低山だし、これくらいの装備で大丈夫だろう」と気軽な装備で出かけたが、山頂付近は氷点下。寒すぎて、山頂ランチを諦めて撤退したことがある。この時は、ダウンジャケットや毛糸の手袋、レインウェア上下を持参していたものの、ネックウォーマーやニット帽、カイロや風邪を通さない素材の手袋、ダウンパンツなどの装備を持参しなかったため、休憩中に身体が冷えてしまった。

 低山とはいえ、冬場は寒さ対策が重要だと思い知る苦い経験となった。以来、体温調節がしやすい防寒具やカイロなどを多めに持って行くようになった。

 冬の低山は高山に比べて、虫が少ない中快適に登れるのが魅力の一つだが、事前に天気予報をチェックし、山頂付近は平地より気温が低くなることを想定してしっかり防寒対策しておこう。