猫魔ヶ岳(ねこまがたけ)をご存じだろうか。猫魔ヶ岳は、福島県耶麻郡磐梯町(やまぐんばんだいちょう)にある標高約1,404mの山で、猫魔火山の主峰の一つである。標高約1,300mまではリフトを使って移動でき、山頂を目指さなくても冬のスノーシューハイキングが楽しめる場所だ。

 リフト上には一面の銀世界が広がり、稜線上から日本で4番目に大きな湖、猪苗代湖や日本百名山の一つ磐梯山を見渡すことができる。筆者は猫魔ヶ岳でスノーシューハイキングをするため、関西から公共交通機関を乗り継いでくるほどお気に入りの場所である。

 この記事では登山歴9年の筆者が、冬の猫魔ヶ岳をおすすめする理由を3つ紹介したい。リフトを利用してスノーシューハイキングをするには現地で簡単な手続きが必要である。記事の最後に、手続きについても紹介しているので参考にしてほしい。

「星野リゾート ネコマ マウンテン」スキー場内、正面に見えるリフトに乗る

■新設のリフト「ニャルツチェア」で、標高約1,300mへ!

ゲレンデ内をリフトで移動、終点に近づくにつれて霧氷が次々と現れる

 冬の猫魔ヶ岳のおすすめのポイント1つ目は、2023年12月にオープンしたばかりの国内最大級のスキー場「星野リゾート ネコマ マウンテン」の連結リフト「ニャルツチェア」を利用して、標高約1,300mまで移動できることだ。リフト終点から手軽に雪景色やスノーシューハイキングが楽しめる。

 これまでは山を挟んで北側に「旧猫魔スキー場」、南側に「旧アルツ磐梯」の2つのスキー場があり、両スキー場の移動には山を回り込むように車で1時間ほどを要していた。「星野リゾート ネコマ マウンテン」のオープンに際し、北側と南側の両スキー場をつなぐ連結リフト「ニャルツチェア」が開通。合計13リフト、33コースがある巨大なスノーリゾートに生まれ変わったのだ。

 リフト終点から反対側のスキー場までは道の両脇にロープが張られ、迷うことなく反対側のエリアに辿り着けるように整備されている。

 猫魔ヶ岳山頂へは標高1,312mのピーク辺りからロープをくぐって西方向へ向かわなければならない。入山ポイントには道標はないため、山頂を目指すには地形図とコンパスを利用して入山ポイントを見極める読図力が必要である。雪山登山経験のある中級者以上の方は猫魔ヶ岳山頂に立ち寄ってみるのもよいだろう。

■霧氷の樹林帯の中を歩ける

リフト終点付近から見えた霧氷

 猫魔ヶ岳のおすすめポイント2つ目は、霧氷である。気温が低く晴れた日、運が良ければ「ニャルツチェア」に乗りながら霧氷の中の空中散歩を楽しめる。

 筆者は2023年3月初旬、「ニャルツチェア」の前身となる旧猫魔スキー場のリフトを利用して標高約1,300mのリフト終点まで昇った。標高が上がるにつれて霧氷の数が増え、終点に着く頃には辺り一面、氷の世界であった。

 暖冬と言われる2024年は関西地域では霧氷を見られる機会はわずか。筆者たちは空と霧氷が織りなす、青と白のコントラストに夢中になり、何十枚もの霧氷の写真や動画を撮影した。

■冬の磐梯山と雄国沼、猪苗代湖の絶景が見える

猫魔ヶ岳の稜線から見える磐梯山

 猫魔ヶ岳稜線のおすすめポイント3つ目は、稜線上からの絶景だ。猫魔ヶ岳の稜線上にある「1,312mピーク」から歩きはじめると、真正面に猪苗代湖、東方向に磐梯山の姿が目に入るであろう。

 磐梯山は昔「いわはしやま」と呼ばれ、天に掛かる岩の梯子を意味していたそうだ。また、その形から会津富士(あいづふじ)とも呼ばれ、福島県のシンボルにもなっている山である。南エリアリフト最終地点の近くにある猫魔八方台は磐梯山がより近くに見える絶景ポイント。ぜひスノーシューで猫魔八方台まで足を延ばしてみよう。

 雪山経験の豊富な中級者以上の登山者であれば、猫魔ヶ岳山頂からの景色もおすすめである。山頂から眼下に国の天然記念物に指定されている「雄国沼(おぐにぬま)湿原」が見える。雪と氷で覆われた真っ白な雄国沼は、完全凍結していれば氷上散歩もできる。

 雄国沼に行くには一旦下山して、車を7分ほど走らせた「雄国沼せせらぎ探勝路入口」からのコースがおすすめ。徒歩で片道1時間半ほどかかるが、時間に余裕があれば立ち寄ってみよう。アップダウンのほぼない探勝路をスノーシューハイキングを楽しみながら歩ける。

 筆者は実際に雄国沼の上を歩いてみた。最初の一歩は氷が割れないか不安でおそるおそる端の方をを歩いたが、凍結しており大丈夫だとわかると、次第に氷の感触が楽しくなって大胆になり、沼の上を思いっきり友人たちと駆け回った。

雄国沼の上を歩き回った跡

 また、山頂から北西方面に見える一際白い山並みは、飯豊連峰(いいでれんぽう)である。日本海側の天候の影響を大きく受け、水が豊富なこの山は冬、真っ白な姿になる。

猫魔ヶ岳山頂から見える飯豊連峰(右奥)