都会のイメージが強い東京都にも魅力的な山が多く存在するのをご存じだろうか。標高の高い山々が雪で閉ざされる中、都内の山はシーズンが長く、冬でも登ることのできる山が多い。今回はそんな中から「三頭山(みとうさん)」を紹介したい。「檜原都民の森」を歩いて目指す三頭山には魅力がいっぱいだ。

■奥多摩三山のひとつ「三頭山・標高1,531m」

三頭山「西峰」に立つ山頂の標識

 奥多摩三山(おくたまさんざん・おくたまさんさん)は、東京都の奥多摩山域にある、大岳山(おおだけさん)、御前山(ごぜんやま)、三頭山(みとうさん)のことである。

 三頭山は奥多摩三山の中でも最高峰の標高1,531mで、日本三百名山に選定されているほか、山梨県との県境にあることから山梨百名山にも選ばれている。

 三つの頂上があることから「三頭山」と呼ばれ、西峰(1,524.5m)、中央峰(1,531m)、東峰(1,527.5m)があり、一等三角点は東峰に置かれ、古くは山の神々が集まる場所で「鹿妻山(かづまやま)」と呼ばれていたそうだ。

■ハイカー、ライダー、サイクリストで賑わう複合施設「檜原都民の森」

登山口となる「檜原都民の森」の入口

 登山口となっている「檜原都民の森」で楽しめるのは、登山やハイキングだけではない。「檜原都民の森」の中にある施設、森林館ではこの辺りに住む動物や鳥や植物の情報を知ることができたり、剥製の展示などもされている。

森林館。当日受付が可能な「丸太切り体験」もできる

 木工センターでは定期的に開催している木工教室や、当日でも参加できる自由教室を実施しており、キーホルダーや手型抜きなどの製作が可能だ。大型の機械が揃っており、本格的な木工を学ぶことができる(一部は要予約)。

 「檜原都民の森」が人気なのはほかにも理由がある。同施設に続く東京都道206号線「奥多摩周遊道路」は、「日本百名道」に選定されている人気のドライブスポットなのだ。それに加え、ロードバイクのレースが開催されるヒルクライムスポットとしても有名である。

檜原都民の森の駐車場。お土産屋や軽食を食べることができるため、たいへん賑わう

■森林セラピーロードを通って三頭大滝へ

 檜原都民の森の入口から森林館を抜けて「森林セラピーロード」を通り、山歩きがスタートとなる。

「森林セラピーロード」はウッドチップが敷き詰められて歩きやすい

 ​​檜原都民の森の三頭大滝(みとうおおたき)まで続く「大滝の路」は、東京都内で初めて「森林セラピーロード」に認定された場所だ。

 森林セラピーとは、科学的な証拠に裏付けされた森林浴のことで、森を楽しみながらこころと身体の健康維持・増進、病気の予防を行うことを目的としている。

 駐車場から20分ほど「森林セラピーロード」を歩いたところで三頭大滝に到着する。冬は寒波などの気温低下によって滝が凍りつく「氷瀑(ひょうばく)」が見られることもある。

落差33mの三頭大滝。南秋川最大の滝で多摩川と合流して東京湾へと流れる 

■本格的な登山道「冬にしか咲かない花を見つけよう」

 三頭大滝を過ぎると森林セラピーロードも終わり、本格的な登山道となる。静かな森の中は冬枯れしており、見通しがいいので野鳥観察しながら歩くことができる。

沢沿いに続く登山道。沢のせせらぎを聞きながら歩く

 檜原都民の森には冬も楽しめる「花」がある。シモバシラの花をご存じだろうか。シソ科の「シモバシラ」は冬になると地上部は枯れてしまうが、根から吸い上げられた水分が地上部の枯れた茎から染み出して氷点下の外気に触れて氷の結晶となり、それがいくつもの層になって「氷の花」のようになる。よく晴れて放射冷却で冷え込んだ朝に出現する確率が高まる。気温が氷点下であることに加え、雨や雪や強風だとできないといった一定の条件が揃った時だけ見られる自然現象だ。

シモバシラの花。日の当たらない斜面で見られるので探しながら歩くと単調な道も楽しめる

 冬枯れした森の中は寂しさを感じる反面、野鳥の姿を確認しやすかったり、シモバシラの花を見つけるなど、実は楽しみが多い。ただし、あたりに気を取られすぎて転ばないよう注意してほしい。

■西峰から望む富士山と秩父を代表する山々

三頭山「西峰」から望む富士山。残念ながら富士山山頂付近は雲に隠れていた

 三頭大滝から歩くこと1時間で三頭山「西峰」に到着する。晴れていれば西峰からは富士山を望むことができ、ベンチも多く設置されており景色を楽しむ人で賑わう場所だ。富士山のある反対方向には奥多摩・秩父を代表する山々を望むことができるので、好きな景色を探して楽しんでほしい。

■東峰展望台から望む関東平野

三頭山・東峰にある展望台。人は少なく、穴場的な場所だった

 三頭山の三つあるピークの中で、中央峰はほとんど眺望がない。三角点が設置されている東峰には展望台があり、関東平野を望むことができる。西峰から東峰まで約5分の行程。人気の西峰に比べて東峰は人が少ないので、ゆっくりしたい人にはおすすめだ。

うっすらと見える関東平野の街並み。冬の晴れた日にはさらによく見える

 東峰からは鞘口峠(さやぐちとうげ)へと下り、森林館へと下山する。行動時間はトータル2時間半ほどだが、冬期は凍結している場所や、日の当たらない場所に雪が残っていることもあり、いつもよりもペースダウンすることを想定し、時間には余裕をもっておきたい。凍結に備え、チェーンスパイクや軽アイゼンの携帯も忘れないことだ。

 三頭山で景色、野鳥観察を楽しみつつ、木工体験や、道中のドライブも楽しめる檜原都民の森に出かけてみてはどうだろうか。

〈登山ルート〉
都民の森駐車場→(20分)→三頭大滝→(1時間)→三頭山・西峰→(5分)→三頭山・東峰→(45分)→鞘口峠→(20分)→都民の森駐車場

〈檜原都民の森へのアクセス〉
中央自動車道・上野原ICから県道33号線、都道206号線経由で46分(28.3km)

●【MAP】檜原都民の森