コロナ禍での自粛生活が続く中、キャンプや焚き火への関心が増した方は少なくないはず。

 今回お話を伺ったアウトドアコーディネーターの小雀陣二さんは、昨年の春に焚き火料理をテーマにした、その名も『焚き火料理の本』を手がけたお方。アウトドアを仕事にし始めたきっかけや、焚き火の魅力、新しい著書について前後編2回に渡ってお話してもらった。

Profile:小雀陣二 アウトドアコーディネーター。アウトドアでの経験と料理のスキルを生かし、手軽な野外料理を紹介している。アウトドアツアーや道具開発、メディアでの撮影にも長年携わる。神奈川県・三崎にてカフェ「雀家」も経営している。最新刊『焚き火料理の本』(山と溪谷社刊)ほか、著書多数@takibi_ryorinohon

■アウトドアコーディネーターなんて仕事は、世の中に存在しなかった

様々な切り口でアウトドア料理の本を手掛けてきた

ーアウトドアにまつわる幅広いお仕事を手掛けていますが、小雀さんの肩書きは、何になるんですか?

 手掛けていることいろいろをひっくるめて、「アウトドアコーディネーター」って名乗っています。

ーどのようなお仕事なのでしょう。

 アウトドアでのいろいろをコーディネートするお仕事、と思っていただければ。例えば、雑誌やテレビの撮影をするにあたって、撮影場所や使う道具、ウエアなど諸々を用意します。ときには、食事も作るし、荷物も運ぶ。で、今はそこから派生して、アウトドア料理のレシピ提案や、新しい道具の開発を手伝ったり、自分のお店も持つようになったといった具合です。

撮影に必要な道具の準備から設営、時にモデル役まで務める

ースタイリスト兼、調理師兼、歩荷兼、商品開発兼……

 そういうことをすべてやる人のことを指す言葉がなかった。全部を表せるものとして、便利な肩書きでしょう。元々こんな職業は世の中にはなかったのですが、お世話になっていた方から何か付けた方がいいと言われて、辞書を片手に考えた肩書きなんですよ。

■兄の買い物について行ったことが全ての始まり

無人のビーチでの料理もお手のもの。現在、無人地帯のキャンプに関する新たな書籍も進行中だそう

ー今の仕事に就く前は、何をされていたのですか?

 初めは自動車の整備工をしていました。当時、「マウンテンバイクを買いに行くから一緒にこないか」と兄に誘われて、なんの気なしについて行って買ってしまったのが運の付き。改造にハマってしまいまして、毎週末どこかの山に担ぎ上げては自転車に乗ってました。 

ー整備工のスキルが自転車に役立ったのですね。お兄さんとはよく出掛けていたのですか?

 いや、兄は街乗り専門だったんですよ。僕には2人の仲間がいて、1人は山登りや雪山を滑るのも好きで、もう1人はカヤックが好きなやつだった。この2人の影響でアウトドアの世界の幅がぐっと広がりました。その頃からアウトドアの仕事に就きたいと思い始めて、パタゴニアに転職しました。 

食材は現地調達で料理は現場で考える、なんてことも珍しくない

ーまだパタゴニアが日本では今ほど大きな会社ではなかった頃ですね。

 募集はかかっていなかったんですけど、もう毎月「入れてくれ~」って電話してました。今思えば、かなりのストーカー具合でしたね。半年以上粘り続けていたら、たまたま空きが出て入れてもらえたんです。そこで何年か働いたあとは、アメリカ発のアウトドア大型セレクトショップ「REI(アールイーアイ)」が日本に上陸したタイミングで転職しました。この2社で働いていた頃の仲間たちは、いまもアウトドア業界で仕事をしている人も多くて、すごい財産です。

ーREIは2年弱で日本から撤退してしまったのですよね。激動…。

 そうなんです。さて、どうしようと思っていたところで、アウトドア誌に声をかけてもらえるようになって、料理を作ったり、道具やウエアを揃えたり、ロケの段取りをしたり、今やっているような仕事をするようになったんです。キャンプ料理の連載を始めたのもこの時だから、今から20年近く前の話しですね。