ひんやりとした風や、虫の声に秋の深まりを感じる今日この頃。今年の紅葉狩りはどこに行こうか楽しみにしている人も多いのではないだろうか。山々が錦秋に染まる大自然の紅葉も素敵だが、実は街中にも紅葉スポットはたくさんある。

 今回は、新潟県長岡市越路地域にある「もみじ園」を散策した時の様子をご紹介しよう。

■長岡市越路もみじ園とは

もみじ園からの眺め(撮影:田奈真知)

 新潟県長岡市越路(こしじ)は長岡の中央部から信濃川を渡った、田畑と住宅街が広がる静かな街。文化財級の建造物が数多く残されている歴史ある地域だ。もみじ園はそんな越路の街を見下ろす、小高い丘の上につくられた回遊式庭園である。

 4000平方メートルの広大な敷地には、国登録有形文化財「巴ヶ丘もみじ公園巴ヶ丘山荘」と、山荘を取り囲むように庭園が造園され、イロハカエデ、ソメイヨシノをはじめとした、さまざまな木々が植樹されている。

 四季折々の装いで目を楽しませてくれるが、とりわけ秋になると真っ赤に染まったイロハカエデが庭園を彩り、多くの人々が訪れる紅葉スポットだ。

■もとは大地主の別荘内につくられた庭園

もとは大地主の別荘(撮影:田奈真知)

 もとは越路の大地主・高橋(たかは、はしごだか)家の別荘として1896年(明治29年)に巴ヶ丘山荘が建てられ、ときを同じくしてもみじ園も造園された。高橋家の当主・高橋九郎氏は長岡市の地銀・第四北越銀行の前身の一つ「神谷信用組合」の創業者だ。

 高橋氏は衆議院議員も務めた地元の名士。地元では「巴ヶ丘・高九(たかきゅう・たかは、はしごだか)の別荘」と呼ばれ親しまれていた。平成元年に町が寄贈を受け、越路・朝日酒造の協力を受け公園として整備。その後一般公開された。

■樹齢150年超えの木々が植樹された貴重な庭園

さまざまな樹木が植えられた庭園(撮影:田奈真知)
真っ赤なもみじに彩られた庭園(撮影:田奈真知)

 約4000平方メートルの園内には、高橋家が事業で縁のあった京都から移植した、樹齢150~200年のイロハカエデをはじめ、ヤマザクラやツツジなどが多数植樹されている。秋には庭園内が深みのある美しい赤色・黄色に染まる。

 庭園はぐるりと散策することができ、上を見ると秋空に咲いた花のように、美しい真っ赤な紅葉。とても美しく思わず見とれてしまう。別荘まわりには枯山水(かれさんすい)の小さな飛び石や石灯籠が置かれていた。

見上げると真っ赤な紅葉のトンネル(撮影:田奈真知)
別荘のまわりにつくられた日本庭園(撮影:田奈真知)

 苔むした石灯籠や庭石は、しっとり露をまといキラキラと輝いて見えた。庭園の中をゆっくりと散策すると、小さな発見の積み重ねがあって面白い。

 登山やハイキングで楽しむ紅葉狩りは、自然の雄大さを感じることができるが、庭園内をじっくり観察する紅葉狩りは、木や石一つひとつの趣を感じることができる。いわば、和の美意識を堪能する紅葉狩りだ。