先週、ついに開山日を迎えた富士山。登山者数はコロナ禍前の2017年を上回ったそうで、海外からの渡航も解禁された今年の夏は、お盆や週末を中心に混雑することが予想されます。

 そこで今回は、山頂やご来光はマストではないけど富士山の雰囲気を味わいたい方におすすめ、混雑を避けて抜け道的に富士山を楽しめるルートを紹介します。

■目的地は富士山山頂ではなく「宝永山」

スタートは富士宮口から

 先にカラクリを明かすと、このルートで目指すのは富士山山頂ではありません。「宝永山」という、富士山最大の側火山です。

 側火山とは、主火口以外の噴火活動で形成されたピークのことで、富士山には宝永山以外にもいくつかの側火山があります。宝永山は中でも、最大、最新のもので、1707年(宝永4年)の噴火で誕生したため、その名が付けられました。ちなみに、この宝永の大噴火以降、現在に至るまで富士山は300年以上の間、一度も噴火していません。

巨大な第一噴火口。地球じゃない惑星のようです

 側火山とはいえ、標高は2,693mとなかなかのもの。奥秩父の金峰山(2,599m)、八ヶ岳の蓼科山(2,531m)、同じく火山の浅間山(2,568m)など並み居る名峰よりも標高が高く、最寄り登山口の富士宮口から山頂までは2時間少々とルートタイム自体は短めですが、なかなか登り応えがあります。

■景色や登山道は、当然ながら富士山そっくり

富士山山頂は、宝永山からさらに1,000m以上。遥か雲の向こう

 山頂からの景色は、独立峰の富士山だからこその素晴らしさがあります。道中に見える巨大な火口や、御殿場ルートの大砂走りのような登山道などは、まさに富士山そのもの。少しスケールダウンはするものの、富士山に登っている雰囲気は宝永山でも十分満喫できるのではないかと思います。

富士山ならではの植物も観察できる
この日は貸切状態で登ることができた

 取材日は、富士山の開山直前の平日でした(宝永山は富士山の開山前から登ることができる)。時折、ガスが晴れて青空も覗くような天候でしたが、天気予報が芳しくなかったためか、すれ違った登山者は数名のみ。仲間だけで富士山を貸し切っているような時間を楽しめました。